米景気がついに底を打った
信頼できる米調査機関2社が景気後退局面は終わりつつあると宣言。ただし雇用の悪化はしばらく続きそうだ
消費も戻るか アメリカのGDPは第3四半期(7~9月)にもプラスに転じると予測されている(4月2日、ニューヨーク) Lucas Jackson-Reuters
全米を覆う長い悪夢は終わるのか。大恐慌ならぬ大景気後退は07年12月に始まり、その明確な終わりは見えない。3月に景気回復の「新芽」が見えてきたと発言したベン・バーナンキFRB(連邦準備理事会)議長は、失業率が急上昇するなかアナリストらに冷笑されている。
だが私は今、あえて景気後退がかなりの可能性で底を打ったと宣言したい。それはウォールストリート・ジャーナル紙の調査で、多くのエコノミストが景気は今四半期中に底を打つと答えたからではない。投資銀行とも雑音ばかり流す経済専門局CNBCとも関係のない、アメリカで最良かつ最も客観的な2つの機関が最近、景気後退の終わりを宣言したからだ。
セントルイスに拠点を置く大手調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズは13日、顧客向けのリポートで、09年第2四半期のGDP(国内総生産)の伸びはマイナス0.1%だったが、第3四半期は2.4%のプラスに転じるとの予測を示した。
米景気循環調査研究所(ECRI)もこの見方に強く賛成している。数十年にわたり景気循環を研究してきたECRIは、直近の2度の景気後退を一定の正確さをもって予測した数少ない機関の1つだ。
底打ちの3条件は4月にそろった
一般のニュースでよく取り上げられる経済指標(失業率と小売売上高)は、景気の波と同時あるいは遅れて動く指標であり、これまでも経済の方向性を明確に示すものではなかった。そこでECRIは独自の手法を使って、経済指標を長期・週間・短期の各先行指標に分けている。
「われわれが注視するのは先行指標の分岐点であり、それをもとに景気循環と経済全体の分岐点を予測している」とECRIのラクシュマン・アチュサン所長は言う。アチュサンによれば、景気循環を客観的に見極めるのが難しいのは「人間の期待と不安が邪魔をするからだ」。
ECRIは先行指標に関する「3条件」に注目する。まず先行指標が明らかに上昇していること、その上昇が少なくとも3カ月は続くこと、そしてその上昇に広がりがあること(半分以上の指標が上昇していること)だ。
ECRIによると、長期先行指標(1920年代以降の信用、住宅、生産性、利益の指数)は景気が底を打つ6カ月前に上昇し始める。週間先行指標が上がり始めるのは約3~4カ月前。株価や失業保険申請件数を含む短期先行指標が上向くのはたいてい最後だ。
現在この3指標すべてに青信号がともっている。アチュサンによると、長期先行指標は08年11月に上昇に転じ、週間先行指標は08年12月以降回復に向かっている。短期先行指標も09年2月に底を打った。そして「今年4月までに『3条件』が揃った」とアチュサンは言う。
もちろんまだ企業収益は低迷しているし失業率も悪化している。だが独自の手法だけで予測を出すECRIにとって、これらは景気の1要素にすぎない。感情に左右されず論理のみで動くECRIは、経済予測業界における映画『スタートレック』のミスター・スポックのような存在だ。「われわれの判定はこの数週間を含めて週ごとに強くなっている。景気後退はこの夏終わる」とアチュサンは言う。実際には既に終わっているかもしれない。
まだ悪いニュース(とくに企業収益)が多いことについてECRIはどう答えるのか。「指標は普通どれだけ未来を示唆しているかではなく、どれだけ新しいかで評価される。市場を動かす指標のほとんどは短期的な動向と一致するし、企業の業績予測は実際の景気より遅れがちだ。だからアナリストが景気回復の力強い証拠を見つけられなくても不思議ではない」