エンロン帝国の堕ちたエリート
傲慢な企業文化と経営幹部の不正が招いたアメリカ史上最大級の企業破綻は、多くの従業員の職と年金を奪い、企業への信頼も失墜させた
被害者 エンロンの破産申請後、コスト削減策の一環として解雇された従業員たち(2001年12月、テキサス州ヒューストンの本社前で) Richard Carson-Reuters
百歩譲っても、「にわかには信じがたい」と言わざるをえまい。2月7日、議会の公聴会に出席したジェフリー・スキリング元エンロンCEO(最高経営責任者)は、自社の会計処理の不正を知って驚いた、と証言したのである。
実の母親にも、こんな言い分は信じがたい。スキリングの母ベティ(77)は公聴会前に本誌の取材に応じ、「CEOとして役員会に名を連ねている以上、会社で何が起きているかを知らなかったではすまされない」と語っている。「責任をもって説明してほしい」
しかし、責任を取るよりも責任を転嫁したくなるのが世の常。どうやらスキリングはケネス・レイ前会長と手を結び、前CFO(最高財務責任者)のアンドルー・ファスタウに罪をなすりつける作戦のようだ。ファスタウは同社の経営破綻を招いた簿外取引の中心人物で、一連の取引で個人的な利益を得ていたとされる。
直接の接触は避けているものの、スキリングとレイは共通の友人を介して連絡を取り合っている(その「友人」が本誌に語ったところでは、互いの近況を伝え合う程度だとか)。今のところファスタウは沈黙を守っているが、刑事事件として立件されれば司法取引に応じ、スキリングらに不利な証言をする可能性は十分にある。
どんな法廷ドラマが展開されるかは見てのお楽しみだが、人間ドラマのほうもすごい。時代の先端を突っ走り、自分たちは古いルールの上を行くと豪語してきた男たちが、今はルールの守護者たる議会に引き出されている。「エンロン3人組」は今や、20世紀末の傲慢な企業文化の象徴だ。