最新記事

「諭して聞かせるのが大国のあるべき姿だ」

ルラ後のブラジル

新大統領で成長は第2ステージへ
BRICsの異端児の実力は

2010.09.28

ニューストピックス

「諭して聞かせるのが大国のあるべき姿だ」

ブラジルをスター新興国に仕立てたルラ大統領が語るブラジル経済と中南米の民主主義

2010年9月28日(火)12時00分

 ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領(64)は、いつでも自信にあふれている。ブラジル北東部、ペルナンブコ州の貧しい農家に生まれ、7歳のときに一家でサンパウロのスラム街へ移住。14歳から工場で働きながら、自力ではい上がってきた。

 今では中南米最大の国ブラジルを率いるまでになり、世界中の新興国の代弁者も自任する。

 9月23日、国連総会における一般討論演説は慣例によりブラジル大統領のルラから始まった。その前夜、国際社会におけるブラジルの役割からエネルギー問題、世界経済危機まで、本誌マック・マーゴリスがルラに聞いた。

――あなたが大統領に就任したとき、ブラジルは劣等生で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)でも最下位と思われていた。それが今や、スター新興国だ。

 自分自身を尊敬しない人は誰からも尊敬されない。ブラジルはいつも二流国のように振る舞っていた。ブラジルには将来性があると自分たちに言い聞かせながら、その特質を具体的な形に変えていくことをしなかった。

 グローバル化した世界では、じっと座っているだけでは駄目だ。自分から出掛けていって、国を売り込まなければならない。そこで、(関税同盟の)南部共同市場(メルコスル)の強化を優先事項とし、中南米諸国との関係を深めることにした。アフリカとの貿易も重視し、中東へも積極的に出て行った。

 おかげでブラジルの貿易取引は多様化し、経済危機の衝撃を和らげることができた。特定の経済圏に取引を集中させている国々より、ずっと被害は少なかった。また、さまざまな国との結束が生まれ、今では対等な立場でいられる。

 一方で、先進国は世界が抱える深刻な問題を自分たちだけで解決できないことに気付き始めたと思う。ブラジルは03年に、G8サミット(主要国首脳会議)に初めて招かれ、彼らとは今も安定した関係を結んでいる。われわれは国連安全保障理事会の改革も求めており、いつか実現させるつもりだ。

――ブラジルが経済危機を乗り切ったことで、投資家の見方は変わっただろうか。

 1つ例を挙げてみよう。経済危機が始まった頃、各自動車会社のトップは生産量や在庫を少なくするよう命じた。後に彼らは、どんな奇跡を使ってこれほど急速に市場を回復させたのか、説明してほしいとブラジル人に訴えた。

 実際は奇跡などなかった。力強い国内市場があっただけだ。車を買いたい消費者がいただけだ。 私たちは消費税を一部引き下げ、消費者が低い金利でローンを組めるよう自動車会社に要請した。その結果、車の販売台数が次々と記録を塗り替えていった。冷蔵庫や洗濯機、コンピューターや住宅でも同じことが起きた。

 すべての国がブラジルや中国と同じくらい迅速に、こうした対応を取っていれば、世界経済はもっと素早く回復できたはずだ。

 既にわれわれは、回復の兆候を目にし始めている。ブラジルが今年100万人の雇用を創出すると言ってもあなたは信じないだろう。でも、公式にどれだけの雇用が生まれるか、12月に出てくる数字を楽しみにしてほしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中