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ルラの後継者を決める「退屈」な大統領選
ブラジルでは、10月3日に行われる大統領選に国民の注目が集まっている。02年の大統領選では左派野党、労働党の名誉党首ルイス・イナシオ・ルラ・ダルシバが勝利したが、当時はようやく経済が回復へ向かい始めたところで労働組合出身のルラが大統領になることへの懸念が高まった。だがルラは見事に経済を回復させた。
今やGDPが2兆ドルに達するブラジルで、ルラに代わる新大統領を目指す候補は2人。1人はルラが自ら後継者に選んだ元左翼ゲリラのディルマ・ルセフ前官房長官。もう1人は中道左派の前サンパウロ州知事ジョゼ・セラだ。
世論調査では、2人の支持率は五分五分。ルセフは、ルラの中道路線を継承するためゲリラとの関係は絶ったと世間にアピール。一方のセラは、ルラ政権に極めて批判的な姿勢を取っているが、実績があるルラに比べれば経済学者のセラのほうが国民に信頼を訴えなければならないと笑う人もいる。
変化を求めない世論のムードは、中南米の政治が成熟した表れとも言えるだろう。10年以上前にベネズエラのチャベス大統領が21世紀型の社会主義革命を掲げて登場し、イデオロギー戦争が激化したが、そんな時期は終わったようだ。
アルゼンチンやボリビアを除けば、中南米諸国の大半が急速に中道路線へと移行している。チリとコロンビアで今年行われた選挙では保守派が勝利。パラグアイやウルグアイなど、急進的ではない社会主義が主流派を占める国も穏健路線を歩んでいる。
こうした状況を生んだのはブラジルだ。自由市場のルールに従い、インフレ率と国の債務を低く抑える──ルラがこの信条を固く守った結果、ブラジル経済は安定した。ルセフもセラもルラと同じ路線の政策を唱えている。「チェンジ」なき退屈な選挙こそ、今のブラジル国民の望みかもしれない。
[2010年7月28日号掲載]