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岐路に立つEU
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近づくのか
左派の夜明けはなぜ来ない
「資本主義の危機」を生かせず、欧州議会選でも議席を減らした重症ぶり
ヨーロッパの多くの国々で左派政党の低迷が止まらない。古臭い主張ばかりを繰り返し、有権者からも見放されつつある彼らが、現在の経済危機という追い風を生かすためにはいったい何が必要なのか。
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ヨーロッパの左派にとって、今は大きなチャンスのはずだ。資本主義は危機に瀕している。経済は壊滅的な打撃を被り、失業率も上昇。経済危機に対処するために、政府が再び経済で大きな役割を担い始めた。右派の自由市場型世界観と一線を画した新しい選択肢を打ち出すための機は熟した。
しかし、ヨーロッパの20世紀型の古い左派政党は軒並み苦戦している。EU(欧州連合)の27カ国のうち20カ国は、右派の政治家が国政を担っている。フランスのニコラ・サルコジ大統領、イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はいずれも右派の政治家だ。EUの4大国のなかで左派の首脳はイギリスのゴードン・ブラウン首相だけ。そのブラウンも政権維持が危ぶまれている。
ある意味でヨーロッパの左派を追い詰めたのは、ほかならぬ自分たちの運動の成功だった。社会民主主義とは「不必要な抑圧や飢え、戦争、民族間の激しい憎悪、際限ない欲望、恨みと羨望を少しずつ突き崩していくことを目指す粘り強い意思」だと、ポーランド出身の哲学者レシェク・コワコフスキーはかつて言った。
だが今や福祉制度が整備され、20世紀半ばに切実な問題だった極度の貧困に対する恐怖はほぼなくなり、古典的な階級闘争は姿を消した。左派政党が代弁、擁護すべき「プロレタリアート(無産階級)」の中身も大きく変わった。白人男性の労働組合員だけを相手にしていればいい時代はもはや過去のもの。移民やパートタイマーの女性といった新しいタイプのプロレタリアートが登場し始めている。
労働組合の影響力も相対的に弱まっている。現在のヨーロッパの民間経済においては労働組合員の数より中小・零細企業の数のほうが多い。一方、空前の金融危機が起きると、これまで大筋で反産業界の立場を取り続けてきた左派政党は(当然といえば当然だが)どう対処すべきか分からなかった。
左派連帯を阻む国内事情
強力なリーダーシップを発揮できる左派の指導者もいない。5月にギリシャの左派政党「全ギリシャ社会主義運動(PASOK)」のイェオルイオス・パパンドレウ党首が音頭を取り、アテネにヨーロッパの左派指導者が集結。フランスの社会党前大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤル、スペインのフェリペ・ゴンサレス元首相、イタリアのマッシモ・ダレーマ元首相といった面々が顔をそろえた。
しかし、一貫したメッセージを打ち出すことはできなかった。ネオリベラリズム(新自由主義)とネオコンサバティズム(新保守主義)に対する古臭い批判を繰り返しただけ。現代資本主義に怒りをぶつけ、ジョージ・W・ブッシュ前米大統領を攻撃しておけば、有権者の支持を取り戻せるとでも思っているのだろうか。
6月7日までに実施されたEUの欧州議会選挙で、左派は議席を大きく減らした。そもそも、各国の左派政党の足並みがそろっていなかった。
何しろ彼らは、欧州委員長に誰を推すかという基本的な点ですら一致できないのだ。イギリス、スペイン、ポルトガルの左派政党は、現職で右派のジョゼ・マヌエル・バローゾの続投を支持する。
左派は具体性のある政策を共同で打ち出すこともできなかった。アメリカのバラク・オバマ政権ばりの大規模な公共投資による景気刺激策を提案しようにも、ドイツの社会民主党出身の財務相が反対しているので統一のマニフェスト(政策綱領)に盛り込めない。