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オージーが恋した新雪のゲレンデ
北海道のニセコがオーストラリアのスキーヤーの間で大人気の理由
オーストラリア人のスキーインストラクター、ロス・フィンドレーが北海道のニセコにやって来たのは14年前。周りにいるオーストラリア人といえば、学校で英語を教えている2~3人くらい。リゾート地としてのニセコ人気はすでに下り坂で、本州からの数少ないスキー客も3日ほどで帰っていった。
そのニセコが今では「リトル・シドニー」だ。年を追うごとにオーストラリア人観光客が倍増している。05年1月にオーストラリア航空がケアンズ―札幌間の直行便を就航したこともあり、05年は1万人に迫る勢いだ。
おかげで、新しい需要も生まれた。彼らがニセコに来る目的はスキーであって、懐石料理や温泉ではない。そのため旅館や民宿より、長期滞在向けの設備が整った宿泊場所を求めている。
これに目をつけたオーストラリアの起業家が、こぞってコンドミニアムを建設している。「うちのコンドミニアムは、7月までに冬季分の70%が予約で埋まる。1月には99・5%に達する」と、リゾート会社「北海道トラックス」のマット・デニングは言う。
極上のパウダースノーと完璧な設備
オーストラリアの不動産価格が頭打ちになる一方、日本では底値から値上げに転じはじめている。デニングは自国の投資家に、今後5年間で50%のキャピタルゲインが見込めると勧めている。売り込みが功を奏してか、北海道トラックスが建設した28戸のコンドミニアムは4000万円以上にもかかわらず、完成前に完売した。
ニセコの魅力は、なんといっても雪質だ。年間降雪量は15メートルを超し、ゲレンデは常に柔らかいパウダースノーで覆われる。「私の国にこんなスキー場はない」と、シンガポールに住むオーストラリア人のコンピュータプログラマー、ジョシュア・コンロイは言う。「ニセコは完璧に整備されており、しかもパウダースノー。周辺の自然も素晴らしく、ゴンドラは最新式だ」
安く楽しめるのも魅力だ。コンロイによれば、オーストラリアでは1日に8500円ほどかかり、午後4時までしか滑れなかったという。それが、ニセコなら3倍弱の金額で6日間、夜9時まで満喫できる。
「2~3年前まで、オーストラリア人は『日本で本当にスキーができるの?』と思っていた」と、デニングは言う。「日本のイメージは物価が高く、どこも混雑していて、コンクリートだらけ。ここは別天地だ」
急速に変貌するニセコから、しばらく目を離せない。
[2005年3月 9日号掲載]