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『グレイズ・アナトミー』 ドクターを襲う末期症状

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2009.07.17

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『グレイズ・アナトミー』 ドクターを襲う末期症状

研修医と指導医の恋模様を描いて大ヒットした『グレイズ・アナトミー』の盛り上がらない新シーズン

2009年7月17日(金)12時34分
ラミン・セトゥデ(エンターテインメント担当)

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』の第3シーズン最終回。研修医のクリスティーナ・ヤン(サンドラ・オー)と外科医プレストン・バーク(イザイア・ワシントン)はようやく迎えた結婚式当日、会場まで来て別れを決断する。

 突然の破局を招待客に伝える役が回ってきたのは、クリスティーナの親友で研修医のメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)だ。メレディスは前へ進み出て、動じることなく宣言する。「おしまいです。皆さんお引き取りください。すべて、おしまいなんです」

 このときメレディスは、長い間切っても切れなかった恋人デレク・シェパード(パトリック・デンプシー)に、自分たちの関係も終わったことを暗に宣言した。

 今となっては、この「終結宣言」は作品そのものに向けられていたのではないかと思えてしまう。第4シーズンに入ると、小気味よかったストーリーも、ファンを夢中にさせた魅力も消えてしまった。

出尽くした三角関係

 シアトルの大病院を舞台にした『グレイズ・アナトミー』は、『ER 緊急救命室』のような医療ドラマに、研修医と指導医の恋模様をかけ合わせたドラマだ。笑えるだけでなく、重く心にのしかかる場面も多い(多くの患者が死ぬ)。しかし全体としては、いつも明るく前向きなトーンに満ちていた。

 主人公メレディスは仕事にも恋にも全力投球。その過程で傷ついてばかりだが、そんな彼女をファンはいつも応援してきた。デレクが妻帯者だとわかったときも、その妻がデレクとよりを戻すために同じ病院に勤めはじめたときも。

 こうした三角関係が一番の魅力だったのに、第3シーズンでデレクが妻を捨てメレディスを選ぶと最大のドラマが失われた。しかもメレディスは自分の気持ちに自信がもてなくなり、ファンをイライラさせる。

 プロデューサー兼脚本家のションダ・ライムズは、「第3シーズンはきつかった。終わってよかった」と、第4シーズン初日のブログに書いている。残念ながら喜ぶ理由は何1つない。新シーズンはよくなるどころか、止まった心電図のようにぴくりとも盛り上がらない。

 得意の三角関係(あるいは六角関係)も、すでに出尽くしたようだ。研修医のジョージ(T・R・ナイト)は妻に隠れて親友で同僚のイジー(キャサリン・ハイグル)と関係をもつ。「自分の弟と妹がいちゃついているのを見ているようだ」と、エンターテインメント・ウィークリー誌のグレゴリー・カーシリングは嫌悪感を示している。

 第1シーズンや第2シーズンは違った。ジョージがひそかにメレディスに心を寄せていたり、イジーと重度の心臓病患者の切ないプラトニックラブなど、美しいサイドストーリーも多かった。

打ち切りの日も近い?

 それでも(かなり小さいが)希望はある。デレクは看護師とつき合いはじめるものの、メレディスを忘れられない。さらに2人は、助かる可能性の低い脳腫瘍患者を対象にした、むずかしい手術に一緒に取り組むことになる。

 同性愛者であることを隠している兵士や、死ぬ前にバージンを捨てたがっている10代の少女など、さまざまな患者の姿を通して、愛する者への悲痛な思いが描かれる。「大きな困難のなかの愛」はこの作品が最も輝くテーマだ。

 とはいえ、ファンはこのドラマがあとどのくらい続くのか気が気でないだろう。すでに一部の主要登場人物は番組を去り、デンプシーやハイグルも映画出演が増えてきた(ただしデンプシーは出演契約があと2年残っている)。

 「このドラマは私のキャリアのプラスになったが、今後はストーリー次第だ」と、デンプシーは最近のインタビューで語っている。

 そのとおり。『グレイズ・アナトミー』の生き残りは、脚本家がメスを握り、思い切った手術をできるかどうかにかかっている。

[2008年12月17日号掲載]

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