戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路
「1国2制度による台湾統一」を台無しに
そして原稿の冒頭で記したように、今年の夏に入ってから、無闇に敵をつくるばかりの習近平外交が「佳境」に入っているようである。アメリカという強敵の全面攻撃を前にして、本来ならできるだけ仲間を増やして対処していくべきところ、習政権はその正反対のことをやっている。主敵のアメリカと戦いながら、カナダにもオーストラリアにも日本にもけんかを売っていくのはもはや狂気の沙汰で、「統一戦線」の面影もなければ戦略性のかけらもない。アメリカと対峙している最中、アジアの大国であるインドと準軍事的衝突を起こすとは、理解不可能な行動である。
もちろん習近平政権は「統一戦線」の伝統を完全に忘れたではない。6月22日、習は欧州連合(EU)のミシェル大統領及びフォンデアライエン欧州委員長とのテレビ会談に臨み、中国と欧州が「世界の安定と平和を維持する二大勢力となるべきであり、世界の発展と繁栄を牽引する二大市場となるべきであり、多国間主義を堅持し世界の安定化を図るための二大文明であるべきだ」と述べ、欧州と連携して第3勢力(すなわちアメリカ)と対抗していく姿勢を示した。
言ってみれば、習近平の「連欧抗米」戦略らしきものであるが、しかしそれからわずか1週間後、習政権がとった政治的行動が、欧州との連携を事実上不可能にした。香港国家安全維持法の強行で、中国はイギリスだけでなく、欧州の主な先進国との関係が亀裂を生じたのだ。実際、EU外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は7月13日、香港国家安全維持法に対してEUが対抗措置を準備していることを明らかにした。せっかく「連欧抗米」戦略を考案しながら、自らの行動でそれを直ちにつぶす――まさに習近平外交の不可思議なところである。
台湾政策もそうだ。2019年1月、「1国2制度による台湾統一」を自らの台湾政策の一枚看板として打ち出したのは習近平であるが、それから現在に至るまで、習政権は香港問題でとった行動の1つ1つが、まさに「1国2制度」の欺瞞性を自ら暴き、「1国2制度は嘘ですよ」と自白したかのようなものである。挙げ句の果てに、香港国家安全維持法の制定で自ら1国2制度を完全に壊し、「1国2制度による台湾統一」という構想を台無しにしてしまった。自分の打ち出す政策を自分の蛮行によって打ち壊すとは、習近平外交はもはや支離滅裂の境地に達している。
このような戦略なき「気まぐれ外交」を進めていくと、中国の国際的孤立はますます進み、中国にとっての外部環境の悪化がますます深刻化していくのがオチではなかろうか。
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