米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由
そうすると、合意項目(7)の「双方による査定・評価と紛争処理」の意味は自ずと分かってくる。要するに今後において、中国側が自らの約束したことをきちんと実行しているかどうかを「査定・評価」し、それに関して双方で「紛争」が起きた場合はいかにそれを「処理」するかのことであろう。中国側の発表では一応「双方による査定・評価」となっているが、実際はむしろ、アメリカ側が一方的に中国側の約束履行を「査定・評価」することとなろう。
以上は、中国側の発表した「7つの合意項目」から見た、米中貿易協議「第1段階」合意の概要であるが、ともかくこの合意においては中国側が7つの項目にわたるアメリカ側の要求を受け入れて、それに従って何かをすることを約束した。そして(1)から(6)の項目に関しては、中国は今後具体的な行動をとって自らの約束を履行しなければならないが、アメリカ側は中国に対して背負うべき義務は何もない。アメリカはただ、合意項目(7)に従って、中国は今後約束を履行してくるかどうかを「査定・評価」するだけのことである。
中国が一方的にアメリカ側の要求に従って多くの約束・承諾を強いられ、そして約束の履行に関してはアメリカ側によって「査定・評価」される立場にも立たされた。このような合意内容はどう考えても、中国にとっての「不平等条約」であって、不本意と屈辱の合意であろう。
中国がどうしても譲らなかった項目
その代わりに、中国がアメリカ側から何を得たかというと、1つは、12月15日に予定されている新たな対中国制裁関税発動の見送りであり、もう1つは、発動済みの追加関税のうち、約1200億ドル分の中国製品に課している15%の制裁関税を7.5%に下げてもらうことである。その一方、アメリカの対中国制裁関税のもっとも大きな部分、すなわち2500億ドル分の中国に課している25%はそのまま維持されることになる。
その一方、中国側は最後までアメリカの要求を拒否して自らの立場を守った項目もある。アメリカ側が強く求めてきている、中国政府が国有企業に対する今までの産業補助政策をやめてもらうことである。国有企業こそは共産党政権の経済的基盤であるから、中国はどんなことがあっても国有企業に不利となるアメリカ側の要求を飲むことはない。そして、中国側がアメリカのこの要求を飲まないからこそ、米中貿易協議の合意は「第1段階」の合意に止まって、完成された全面的な合意にならないのである。
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