米中貿易戦争で迷走の習近平に「危機管理できない」疑惑
強気になったトランプ政権に対し、習政権はまた柔軟姿勢を示して話し合いによる問題解決を訴えた。6月下旬に大阪で開かれたG20の期間中、習はもう一度トランプと会談して妥協の道を探った。会談の結果、アメリカ側が中国に対する新たな制裁関税の発動をしばらく行わないと表明したのに対し、中国側はアメリカから大豆などの農産物を大量に買うことを約束した。
しかし、どういうわけか会談後に中国側は「大豆を大量に買う」約束を一向に実行しない。それに業を煮やしたトランプ政権は、9月1日に対中制裁関税の第4弾を発動し、新たに1100億ドル分の中国製品に10%の追加関税をかけることにした。中国側も直ちに報復措置をとして、2回に分けて計750億ドル分の米国製品に5~10%を課す計画を公表。1日には原油や大豆など1717品目に対して発動した。
米中貿易戦争はさらなる拡大の一途をたどっていくのか――と思った矢先、9月中旬に入ると中国側はまたもや腰を低くしてアメリカに譲歩してきた。自ら発動したばかりの大豆などの米国農産物に対する制裁関税を「免除」にしたうえ、6月の米中首脳会談で約束した米農産物の大量購入を実施した。今さら約束を実行するのなら、どうして最初に同じことをやらなかったのだろうか。
中国側が譲歩したことでアメリカ政府も態度を軟化させ、話し合いに応じることになった。結果的に10月10日から米中貿易協議が再開されることとなっているが、その結果がどうなるかはまったく油断できない。協議再開によって米中貿易戦争が直ちに収束することはまずない。2018年7月、アメリカ側の発動した制裁関税第1弾に対し、習政権が「断固とした」反撃を行った時点で、貿易戦争の拡大はすでに既定路線になったからだ。
あやふやな対応で「ドツボ」に
しかし一連の経緯を丹念に見ていると、アメリカとの貿易戦争にどう対処するかという国家の一大事に当たって習政権は、さらに言えば習本人は、まったく無定見のままでその場その場での対応をしていたことがよく分かる。柔軟な姿勢で対処するなら、最初からその姿勢で当たればその後の展開は全く違ってくる。強硬姿勢を最後まで強硬姿勢を貫くのも良い。しかしそのどちらでもないようなあやふやな対応をとった結果、アメリカからかけられる制裁関税の範囲と量がますます増え、中国自身が決して望まない貿易戦争は拡大する一方になった。
人口14億人の大国を統治する習政権は、肝心の危機管理に関してどうしてこれほど無定見であやふやなのだろうか。習自身の政治家としての資質によるものか、それとも習体制そのものに何かの致命的な弱点があるからなのか。
本コラムでいずれ、この問題をより深く掘り下げて考察するつもりである。
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