コラム

プーチンの部分動員令によってロシアが分裂? ロシア人男性の国外脱出が止まらない

2022年10月04日(火)17時35分

動員令への抗議デモが広がっている(モスクワ、9月21日) REUTERS

<ロシア国民で戦争熱烈支持は5分の1、猛烈反対は5分の1、残りは「現実逃避」......だが国民との「暗黙の契約」を破ったプーチンの部分動員令によって、戦争支持はあっさりしぼむ可能性も>

戦争が始まって以来、ロシアから脱出したロシア人男性の数は、ウクライナとの戦いに臨んだロシア人男性の数を既に上回っている。ウクライナを屈服させようとするロシアの無謀な行動がどれほど甚だしい混乱に陥っているかは、私の妻の父親を取り巻く状況を見ればよく分かる。

ウクライナ東部のドンバス地方で生まれ、今はロシア国民である義父は、戦争が始まってからずっと自分の母親の安全を祈り続けていた。彼女が暮らす町は、一度はロシア軍に制圧されたが、その後ウクライナ軍の反転攻勢により解放された。

こうしたウクライナ軍の反攻を受けてロシア軍は大打撃を被り、プーチン大統領は9月21日、深刻な兵員不足を補うために、部分動員令を発令せざるを得なくなった。この結果、私の義父も招集されて、愛する母親の命を危うくするための軍事作戦に参加することになるかもしれない。

動員される人数は、少なくとも30万人。一部の報道によると、その数は120万人に達する可能性もあるという。これにより、プーチンはロシア国民との暗黙の契約を破ったことになる。

多くの国民は戦争から目を背けている

ウクライナ侵攻は一般のロシア国民にはほとんど影響を及ぼさないはずだったのに、全国民が戦争の現実から逃れられなくなった。親戚の誰かがろくな訓練もなしに前線に送られて、敵の砲弾の餌食になる可能性が出てきたのだ。

ロシア人政治学者のグリゴリー・ユーディンが数週間前に語った話によると、いま戦争を熱烈に支持している人はロシア国民の約5分の1、激しく反対している人は約5分の1で、残りは現実から目を背け、ロシア軍がウクライナの親戚たちを殺害しようとしているという現実を見ないようにしているという。

このような状況で、戦争への支持はあっさりしぼむ可能性があると、ユーディンは推測している。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story