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コロナ疲れのアメリカ人が求めるバラク・オバマという癒し
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「バーチャル卒業式」のスピーチで現在の指導者を批判したオバマ YOUTUBE/CHASEーREUTERS
<大統領選挙を控えるトランプが今でも厄介に感じる前任者の影響力とは>
5月10 日の母の日、トランプ米大統領は愛息バロンの母親であるメラニア夫人よりもツイッターに多くの時間を費やし、100を超える前代未聞のツイートを連発した。
なかでも最も目についたのは、奇妙で不可解なオバマ前大統領への攻撃だ。オバマは歴史上最大の政治犯罪に関与したと、トランプは主張した。その犯罪とは何かとホワイトハウスの記者会見で問われると、トランプは「オバマゲート」と答えた。犯罪の具体的な中身には触れなかったが、「明々白々」で誰もが知っていることだと主張した。
オバマはアメリカ史上最もクリーンな政権を率いた大統領だった。一方、米連邦最高裁は今もトランプの犯罪や金融上の不正行為を捜査するかどうかを審理している。自分の犯罪の隠蔽に必死の大統領が、前任者の犯罪を創作してみせたわけだ。どうやらオバマゲートとは、オバマ政権が次期トランプ政権を妨害するため、ディープステート(国家の内部で国家を動かしている機関)を指揮してロシアとの共謀のぬれ衣を着せたという疑惑のことらしい。
中立的立場のコメンテーターや捜査員によって徹底的に論破され、嘲笑された主張だが、この陰謀論からトランプがオバマの存在を強く意識していることが分かる。11月の大統領選で再選を狙うトランプにとって、オバマは厄介な障害物として浮上しつつある。
過去への郷愁が持つパワーは強力だ。新型コロナウイルスの脅威によって不確実性が高まっている今、穏やかで学者然とした前大統領の再登場は、比較対象となるトランプをいら立たせている。
アメリカでは4月から5月にかけて、この国で最も偉大なアスリートにしてプロバスケットボールNBAの元スーパースター、マイケル・ジョーダンの10 時間のドキュメンタリーが放映され、人々を魅了した。オバマとジョーダン。現代において最も尊敬を集め、愛され、大きな業績を残した2人の世界的アイコンだ。両者にはシカゴという共通点もある。
ジョーダンはシカゴ・ブルズを6度の優勝に導き、シカゴを地元とする上院議員だったオバマはアメリカを金融危機から救った。このドキュメンタリーは、アメリカ人の過去への強い郷愁を象徴するものだ。大のブルズファンとして知られるオバマは、アメリカが大きな痛みと喪失感の中にある今、ジョーダン並みの鮮やかさで再び姿を現した(このドキュメンタリーにオバマは「元シカゴ市民」の肩書で出演している)。