コラム

新型コロナによる経済封鎖はいつ解除すべき?アメリカ市民が示した1つの考え方

2020年04月22日(水)15時00分

ファウチ(奥)の支持率はトランプより40ポイントも高い LEAH MILLISーREUTERS

<政治と科学の対立は珍しくないが世界が直面する感染危機で大統領より支持を集めるのは科学の権威>

ジョージ・ワシントンやエイブラハム・リンカーンの後継者である第45代アメリカ合衆国大統領は4月17日、ツイッターに4分間で3回の連続投稿を行い、バージニア州、ミシガン州、ミネソタ州を「解放せよ」とつぶやいた。科学的根拠に基づく外出制限を終わらせるため、人々に当局への反抗を呼び掛けたかのようなツイートだ。

バージニア州へのツイートでは、トランプはアメリカ人の銃を持つ権利に言及。知事の自宅待機措置に抵抗する暴力への支持をほのめかした。アメリカ大統領が「科学との戦争」を扇動するメッセージを大々的に発していることを、アメリカ建国の父たちが知ったら墓の中で転げ回るだろう。

この不条理極まりない出来事が示唆しているのは、トランプが冷静さを失っていることだけではない。科学と政治のよくある衝突のありがちな結果でもある(この場合は極端な例だが)。

新型コロナウイルスに対する絶望的な対応は、科学的専門知識への反感が生み出したものだ。トランプは大統領就任前からワクチンが自閉症を引き起こすといった科学的真理を否定する考えを口にしていた。再選が危うくなってきた今、経済活動を止めなければパンデミック(世界的な流行)で何百万人もの死者が出るという科学者の警告を無視したとしても不思議ではない。

国務省の疫学専門家は1月初旬の時点で、このウイルスは世界中に広がり、パンデミックを引き起こす可能性が高いと指摘していた。国防総省情報局(DIA)と国立医療情報センター(NCMI)の1月の報告書も、新型コロナウイルスはアメリカに深刻な問題をもたらすと警告した。

だがトランプは報告書の発表直後、ウイルスは「完全にコントロールされている」と発言。その1カ月ほど後には、「いつか奇跡のように消滅するだろう」と言った。トランプが今回の危機と巨大なリスクをなかなか理解できない理由は、専門家の科学的知識に対する強い不信感だけではない。危機の政治的な側面しか見ていないせいでもある。

トランプは現在、トランプ政権の新型コロナウイルス対策チームを率いるアンソニー・ファウチ国立アレルギー・感染症研究所所長が、大統領をはるかにしのぐ「アメリカで最も信頼される人物」になったことに激怒しているという。

ファウチの支持率はトランプより40ポイントも高い。ファウチの存在はトランプを不安にさせる2大要素を象徴している。第1に、40年の経験に基づく並外れた専門知識。第2に、自分を圧倒する政治的信頼度だ。トランプは#FireFauci(ファウチを解任せよ)というハッシュタグを使ったツイッターのアカウントをリツイートし、本当に解任するのではないかという臆測に火を付けた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブラックロック第4四半期、運用資産が過去最高 株高

ビジネス

米Wファーゴ、10─12月期は利益が予想上回る 2

ワールド

武力紛争が最大のリスク=世界経済フォーラム報告書

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意=当局者
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story