コラム

弾劾訴追でもトランプ再選は可能性大、米民主党ではあの人物が立候補へ?

2019年12月27日(金)11時15分

読めない要素が多過ぎる

全米の世論調査で2位のバーニー・サンダースは、民主党員ですらない。いま78歳の彼は心臓発作を起こしたこともあり、当選すれば史上最高齢の大統領になる。民主社会主義者を自称するが、この言い方は本選でトランプと対決したときに浮動票を遠ざける。つい2カ月前には最有力候補だったエリザベス・ウォーレン上院議員も、最近になって支持率が急落している。

magSR191227issues_trump-4.jpg

サンダースは健康面が不安 DANIEL KRAMER-REUTERS

民主党の有力候補があまりにふがいないので、出馬を否定していた前ニューヨーク市長で大富豪のマイケル・ブルームバーグが先頃名乗りを上げた。前マサチューセッツ州知事のデバル・パトリックも参戦したが、あまり人気はない。この2人の土壇場での出馬は、トランプ再選を何としても阻みたい「ネバー・トランプ派」が抱える緊張感を明確に表している。

このような状況だから、今後何が起きても不思議はない。

著名なラジオ司会者のハワード・スターンは、以前からヒラリー・クリントンが偉大な大統領になると主張してきた。スターンは2008年の予備選で、バラク・オバマではなくヒラリーを支持。2019年5月に発売した新著のメディア発表会では、ヒラリーが選挙運動中に自分のラジオ番組に出演していればトランプに勝てたと強く唱えた。

magSR191227issues_trump-5.jpg

再出馬説が消えないクリントン BRENDAN MCDERMID-REUTERS

そこから事態は驚きの展開を見せる。2019年12月4日、ヒラリーは初めてスターンのテレビ番組に出演し、両親との関係から夫との初デート、さらには2016年の候補者討論会でなぜトランプにもっと強く立ち向かわなかったのかなどを2時間以上にわたり語った。

率直でリラックスしていて、そして面白い。このときのヒラリーならトランプどころか、2008年のオバマにも勝てただろう。番組出演直後の世論調査では、彼女を民主党候補として支持する有権者が21%と、バイデンの20%を上回り最も多かった。大衆紙は「ヒラリー、3度目の立候補か」と書き立て、ブックメーカーは彼女の再出馬の可能性を20%前後と見積もった。

民主党の混沌は始まったばかりだ。ブルームバーグは当初は支持率が低かったが、莫大な資金力を後ろ盾に選挙広告をふんだんに打ち、優秀な陣営スタッフを集めている。

カリスマ性に欠けるブルームバーグだが、その経歴は人の心に訴える。一代で財を築いた億万長者で、トランプの少なくとも15倍の資産を持つ。一流企業の経営経験がある上、世界で最も重要で有名な都市の市長を10年以上務めた。民主党がブルームバーグを指名したくなる理由は確実にある。

magSR191227issues_trump-6.jpg

資金力は抜群のブルームバーグ BRENDAN MCDERMID-REUTERS

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、復活祭の一時停戦を宣言 ウクライナ

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 5
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 10
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story