コラム

弾劾訴追でもトランプ再選は可能性大、米民主党ではあの人物が立候補へ?

2019年12月27日(金)11時15分

憲法にとっての敗北に

だがブルームバーグの浮上は、民主党にとって打撃になる可能性が高い。有力候補が5人に増えれば、予備選の序盤戦で州ごとに勝者が入れ替わりかねない。

トップの座を確実にする候補者が出てこなければ、どの候補も指名獲得に必要な代議員票を確保できず、民主党は「ブローカー・コンベンション」と呼ばれる党大会での自由投票で指名候補を選ぶことになる。自由投票だからヒラリーに肩入れしてもいい。あるいは、オバマ夫人のミシェルを指名候補に選んでもいい。いずれにしてもコンベンションになった時点で、民主党は「エリート主義でまとまりがない」というトランプの主張が裏付けられることになる。

20年ほど前、東欧出身の友人に言われた。アメリカは腐敗したペテン師が大統領になっても国が存続できる、おそらく世界で唯一の大国だと。

これは皮肉の込められた称賛だった。しかしトランプ当選の可能性が前回選挙より高まっていることを考えると、アメリカはまさに彼が言ったとおりの状態で8年間を過ごす可能性がある。

magSR191227issues_trump-7.jpg

トランプには熱狂的な支持層がいる(2019年12月、ペンシルベニア州) STEPHANIE KEITH-REUTERS

トランプの再選は、国が地政学的にも経済的にも好調なため、有権者が無能な指導者を大目に見てもいいと考えていることを示す。だが一方でアメリカは、何世紀にもわたって国に強さをもたらしてきた憲法を弱体化させる深刻なリスクを抱えている。

もしトランプが再選されれば、それは合衆国憲法にとって、そして建国の父たちが描いた人格と思慮と創造性を持つ大統領像にとっての敗北にほかならない。

<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>

【参考記事】安倍外交、活発に外遊しても世界に認められない...「見える化」の処方箋

2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 19日に発効

ビジネス

米CPI、インフレ圧力緩和継続を示唆=リッチモンド

ビジネス

インフレ鎮静化の進展を予測、軟着陸に楽観的=米シカ

ワールド

26年世界石油需要は日量143万バレル増、伸び継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story