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「最も健全な民主主義国」日本は米の「4倍増」要求を自立の好機にせよ
トランプは問題の原因ではなく症状の1つにすぎない YURI GRIPAS-REUTERS
<米軍駐留経費負担の増額要求は、無理難題に見えるが、日本にとってチャンスでもある。地政学的に賢明でない要求だが、トランプはアメリカの変調の原因ではなく症状の1つだからだ>
米リスクコンサルティング会社ユーラシア・グループを率いる国際政治学者イアン・ブレマーが11月18日、パレスホテル東京で「Gゼロサミット2019」を開催した。そのタイミングは地政学的に見て、これ以上ないほど象徴的だ。
【参考記事】トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書
この会議の直前に、米国家安全保障担当の高官2人が7月、日本と韓国に米軍の駐留経費負担を従来の4倍と5倍にそれぞれ増やすよう要求したというニュースが飛び込んできたからだ。世界はリーダーなき「Gゼロ」時代に突入したと主張するブレマーは日本に対し、リベラルな民主主義陣営のモデルになるべきだと説く。
戦略的に見れば、トランプ米大統領のやり方は支離滅裂だ。中国に対抗する超大国アメリカの最高責任者を任じるのであれば、なぜアジアの同盟国との緊張を高め、中国を利するようなまねをするのか。重要な同盟国である日韓との結び付きを強化して、台頭する中国との間でバランスを取るのが地政学的に賢明な策ではないのか。
この点については、トランプの気まぐれな気質のせいだと説明することも可能だ。一貫したビジョンや戦略が見えないトランプ政権の混乱した対応は、外交面で特に目立つ。だが、この説明は表層的過ぎる。
「最も健全な民主主義国家」
今回の要求の背後には、世界のリーダーの地位から徐々に退こうとするアメリカの長期的な動きがある。トランプはアメリカのリーダーシップ喪失の原因ではなく、症状の1つにすぎない。要するに、アメリカは世界のリーダーをもう辞めたいのだ。
アメリカの大統領選挙には、「ポスト・ベトナム症候群」と呼ばれる現象がはっきりと見て取れる。ベトナム戦争以前には、内政・外交の両面で経験豊富な候補者が90%の確率で勝利を収めていた。だが、それ以降は逆に経験の少ない候補者が90%の確率で勝っている。
民主・共和両党は1976年のカーターから2000年のブッシュ、2008年のオバマまで、外交経験のない人物を大統領候補に選ぶ傾向がある。今回の民主党予備選でも、ほぼ無名だった37歳の市長ピート・ブーティジェッジが最初の予備選と党員集会が行われる2州の世論調査でトップに立った。
どの候補者も出馬当時は外交経験に乏しいだけでなく、「撤退の外交」を主張していたように見えた。アメリカでは、ほかの国はもっと大きな役割を引き受けるべきだという主張が一貫して繰り返されてきた。
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