IMF、経済成長予測を大幅に下方修正へ 世界的な景気後退は予想せず

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は17日、貿易摩擦や国際貿易体制の広範な変化を受けて、IMFの経済予測が大幅に下方修正されるとの見通しを示した。ただ、世界的な景気後退は予想しなかった。(2025年 ロイター/Yuri Gripas)
[ワシントン 17日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は17日、貿易摩擦や国際貿易体制の広範な変化を受けて、IMFの経済予測が大幅に下方修正されるとの見通しを示した。ただ、世界的な景気後退は予想しなかった。
来週のIMF・世界銀行の春季会合を控えて、ワシントンのIMF本部で行う講演で述べた。
貿易政策を巡る不透明感が「桁違い」のレベルに達しており、金融市場のボラティリティーが極端に高まっていると指摘。
特に最近の米国債利回りの変動は、警告と受け止めるべきだとし「金融環境が悪化すれば誰もが悪影響を受ける」と述べた。
IMFは1月時点で今年と来年の世界経済成長率をともに3.3%と予測していた。22日に新たな「世界経済見通し」を公表する。
「大国同士が対立する中で、中小国が翻弄されている」とし、中国、欧州連合(EU)、米国は世界の3大輸入国・地域であり、金融環境の引き締まりにさらされやすい中小国に大きな影響が波及すると指摘した。
「危機の時期を通じて学んだことの1つは、認識は現実と同じくらい重要だという点だ」とし「認識が悪い方向に変われば、経済のパフォーマンスにかなりの悪影響を与える恐れがある」と述べた。
<保護主義はイノベーションを阻害>
関税の引き上げは、まず経済成長に打撃を与えると主張。大国では関税引き上げが新たな対内投資を促し、雇用創出につながる可能性もあるが、これには時間がかかるとの見方を示した。
「保護主義は長期的に生産性を損なう。特に中小国ではそうだ」とし、産業を競争から保護すれば、起業家精神やイノベーションも阻害されるとの認識を示した。
また、関税は消費者物価と生産者物価を押し上げる可能性がある一方で、人々が支出を控えることでインフレ率が低下する可能性もあるため、IMFはインフレ率が全体としてどちらの方向にも大きく振れることはないと予想していると発言。ただ、一部の国ではインフレ予測が上方修正されるとの見通しを示した。
各国に対し、機敏で信頼できる金融政策と強力な金融市場の規制・監督を維持しながら、経済・金融改革を継続するよう要請。
新興国については、為替の柔軟性を維持すべきであり、支援国は低所得国への援助をしっかり行うべきだと述べた。
「世界は分断ではなく、より強靭な経済へと進むべきだ」とし「深刻なショックが頻繁に起きる時代には、大小を問わず全ての国がグローバル経済を強化するため、それぞれの役割を果たすことができるし、果たす必要がある」と述べた。