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トランプが国勢調査の質問に国籍を追加したかった理由
ワシントンの連邦最高裁前で国勢調査の質問追加に抗議する人々 Carlos Barria-REUTERS
<市民権の有無についての質問が移民を怯えさせ、人口が実際より少なく出れば選挙で自分が有利になれる>
アメリカでは10年ごとに国内の全人口を集計し、年齢や性別、人種などの基礎データを調べる国勢調査の実施が憲法で義務付けられている。
下院の議席数は各州の人口、つまりこの国勢調査の結果に基づいて配分される。間接選挙の大統領選挙でも、投票権を持つ選挙人の州ごとの割り当ては下院の議席数で決まるため、国勢調査が重要な意味を持つ。
さらに国勢調査のデータは、連邦予算の州ごとの配分や割り当てにも使用される。つまり、国勢調査は政府の在り方に極めて大きな影響を与えるのだ。
数カ月前から、その国勢調査が激しい政治対立のテーマになった。理由は、トランプ政権が20年の国勢調査に市民権(国籍)の有無を問う質問を加えようとしたことだ。
質問追加の論拠は、(1)投票権を持つ住民の人数を把握する必要がある、(2)差別を禁じた投票権法をしっかりと施行することにより、人種的・民族的少数派の投票権を守る、の2点だ。
この試みは一大論争を巻き起こした。市民権についての質問追加は、共和・民主のどちらが下院の多数派を握るか(そして大統領選でどららが有利になるか)だけでなく、移民問題にも間違いなく影響を与えるはずだ。
再選狙いの意図的戦略
反対派の主張は次の2点だ。(1)質問を追加する理由はただ1つ、非合法移民など多くの「非市民」を怯えさせ、調査に参加させないようにすること。その結果、特に移民の多い州では人口が少なくとも数百万単位で実際より少なく集計され、下院選挙区の区割り変更が、移民の支持者が多い民主党に不利な(つまり共和党に有利な)形で線引きされることになる。
(2)トランプ政権が口にする投票権法うんぬんの主張は全く無意味だ。投票年齢の市民の人口については、もっと正確な推定が既にある。
国勢調査を所管する商務省のロス長官は18年3月、国勢調査局の専門家の圧倒的多数の意見を無視する形で、市民権に関する質問を国勢調査に加える方針を承認した。反対派はこの決定に訴訟で対抗し、最終的に米連邦最高裁に持ち込まれた。
そして6月27日、最高裁は多数決により、トランプ政権は質問追加の理由を十分に説明していないとの結論に達した。追加の理由は「不自然」で「弁解めいている」と、ジョン・ロバーツ首席判事は述べている。
トランプ大統領は7月11日、20年の国勢調査に市民権の質問を追加することを断念。代わりに政府各省に対し、市民権のデータを商務省に提供するよう命じる大統領令を発令した。
いわゆる「共和党州」の下院議席を増やそうとしたトランプと共和党は手痛い敗北を喫したように見える。だが実際に市民権の質問が国勢調査に追加されなくても、トランプと共和党は既に利益を得ている。
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