災害時「タワマンは陸の孤島」とされても、とどまらざるを得ない日が来る
超高層マンションに備えられる非常用トイレと飲料水生成装置の例。筆者撮影
<超高層ビルの上層階の住人は、地震のときより危ないのか危なくないのか、実例から探った>
今年5月、東京を襲う首都直下地震の被害想定が10年ぶりに見直された。タワマンと呼ばれることが増えた超高層マンションではエレベーターが停止し、機能不全に陥る、というシナリオが想定された。
停電が生じるので、超高層マンションのエレベーターが停止。すると、上層階に住む人は1階に下りるのに階段を使わざるを得ず、支援物資を運び上げることもできない。完全な陸の孤島になってしまう、とされている。
一方で、大災害が起きたとき、マンション住人は避難所に入ることができず、自宅にとどまることが求められる。避難所は、倒壊や延焼で家を失った人で満杯になりがちであるからだ。
そうなると、大災害が起きたとき、「陸の孤島」となる超高層マンションに、多くの住人がとどまることになる。不安にさいなまれるとき、肩を寄せ合いたいのに、孤立せざるを得ない。なんとも困った事態だが、果たして、「陸の孤島」とされるほど悲惨な生活になるのだろうか。
超高層マンションは、災害時、別の顔もみせる
超高層マンションは「停電でエレベーターが止まり、陸の孤島になる」とは、いかにもありそうな話である。
ところが、超高層マンションは災害に強い建物として認定され、1階ロビーが避難所となり、帰宅困難者や避難者を一時的に迎え入れるよう、食料や水、毛布などを備蓄しているケースもある。
「陸の孤島」ならば頼りにならないが、避難所として備蓄品があるなら、大地震が起きた後、超高層マンションを目指してもよさそうだ。
「陸の孤島」なのか、「頼りにできる場所」なのか......大地震の際は大きな違いだ。そこで、想像ではなく、事実に基づいた超高層マンションの災害対策事情をまとめてみた。
本当に「停電で機能不全に陥る」?
まず、「停電でエレベーターが停止し、機能不全に陥る」という点について。
停電でエレベーターが停止するのは、超高層に限らず多くのマンションで起こる事態だ。そのなか、超高層マンションはエレベーターが停止することの弊害が大きい。
そのことがわかっているので、分譲の超高層マンションでは非常用電源を備え、停電時もエレベーターを動かす仕組みが備えられる。もともとは「エレベーター1基を4時間程度動かす非常用電源」が備えられていたが、それでは足りないことが東日本大震災でわかった。
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