コラム

もう家の中に廊下は要らない。コロナ禍で進化するマンションの間取り

2022年07月26日(火)11時14分

玄関からリビングまで室内廊下を設けて、その両側に2つの部屋。リビングの横に、もう一つの部屋。この区分けを上から見ると、「田」の字になるので、「田の字プラン」という呼び名が生まれた。

初期のマンションは4つの部屋で田の字を構成したが、その後のマンションは、住戸全体で田の字を構成したわけだ。

「田の字プラン」は、昭和50年代からマンション3LDKの主流になった。

マンション探しをすると、どこでも似た間取りだなあ、と感じる人が多いだろう。実際、よく似ているのは、「田の字プラン」でつくられているケースが多いからだ。

この「田の字プラン」から脱却し、個性的な間取りはできないか......その声は、以前から購入者からだけでなく、不動産会社からも出ていた。が、定評のある田の字プランを捨て、個性的プランを採用する冒険はできないでいた。

その状況が今回のコロナ禍で変化した。

テレワークやステイホームで、家族が家で過ごす時間が増加。増えた家時間を快適に、楽しくするために、いままでにない間取りが求められたからだ。

コロナ禍で求められるのは「ゆとりある居住スペース」

コロナ禍による家時間の増加で、真っ先に求められたのは「住戸の広さ」。家族全員が長く家に居るようになり、家の中で仕事や勉強をする。さらに、リモート会議のための小部屋が求められたりする。これまでより広いスペースが必要になったわけだ。

しかし、住戸の面積を広くするのは簡単ではないし、広くすれば分譲価格や家賃が高くなる、という問題も生じる。

面積を広くせず、ステイホームしても息苦しくないマンション住戸を実現するために目がつけられたのが室内廊下だ。

室内廊下を通路ではなく、居住スペースに取り込むことができれば、同じ面積でもゆったり暮らすことができる。

室内廊下を手放すことで、ゆとりが手に入るわけだ。

ただし、単純に室内廊下や室内ドアをなくすだけでは、古いタイプの住まいに戻ってしまう。廊下をなくすが、別の方法でプライバシーを確保する。たとえば、区切るところはしっかり区切り、居室の間に収納スペースを効果的に配置する、といった工夫だ。

その最新事例が、写真で紹介した4つの間取りである。

室内廊下をなくすことで、個性的な間取りが増えれば、それはコロナ禍によってもたらされた予想外の恩恵と考えることができそうだ。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story