コラム

五中全会、成長優先で後回しになる国有企業改革

2015年11月06日(金)17時15分

 現在の国有企業改革は、規模の拡大を追い求めることにとどまり、「競争を導入した効率改善」という考え方が後退しているように見えてなりません。国有企業がますます巨大化していけば、ベンチャーや民間企業の参入はより難しくなっていくでしょう。「国進民退」とは政策の恩恵が国有企業に集中し、民間企業は蚊帳の外に置かれていることを表しますが、この改善は難しいと言わざるを得ません。
 
 実は、ある程度の成長率を維持することと、国有企業改革を大胆に進めないことには、「雇用維持」という一つの共通した背景があります。習近平政権は経済政策運営上、安定した雇用を最も重視し、そして人々の生活が前の年よりも良くなっていると実感できることが、同政権への支持につながっています。

 競争の結果は、優勝劣敗です。例えば、重工業分野のある大型国有企業が敗者となった場合、従業員が再雇用先を見つけるのは容易ではありません。「安定した雇用=共産党政権への支持」を損なう可能性のあることはなかなか実行することができないところに中国が抱えるジレンマが浮かび上がります。

プロフィール

齋藤尚登

大和総研主席研究員、経済調査部担当部長。
1968年生まれ。山一証券経済研究所を経て1998年大和総研入社。2003年から2010年まで北京駐在。専門は中国マクロ経済、株式市場制度。近著(いずれも共著)に『中国改革の深化と日本企業の事業展開』(日本貿易振興機構)、『中国資本市場の現状と課題』(資本市場研究会)、『習近平時代の中国人民元がわかる本』(近代セールス社)、『最新 中国金融・資本市場』(金融財政事情研究会)、『これ1冊でわかる世界経済入門』(日経BP社)など。
筆者の大和総研でのレポート・コラム

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