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日産とホンダの経営統合と日本経済の空洞化を考える
更に、生産と同じように付加価値を生む研究開発の機能については、経営のやり方で日本国内において高度で知的な雇用を維持することはできます。こちらも英語が主となり、高度なAI人材を集めたり、先端的な素材や半導体技術などを駆使することになり、もはや日本国内にはそのような人材は細っているのかもしれません。世界が主要な市場であるのなら、デザインやPRも英語となります。ですが、こうした高付加価値部門の多くが国外流出するのであれば、日本経済の空洞化は加速するだけです。
とにかく、日産、ホンダ、三菱自と、日本を発祥の地として日本語のブランドを持つ企業が、仮に一つに集結するのであれば、そのことで日本国内のGDP寄与が高まり、特に日本国内において高度知的雇用を拡大してくれることが期待されます。
実際のところは、そうした期待は必ずしも実現しない可能性が高いと思います。現状の延長であれば、EVモジュールや内燃機関のエンジンといった、付加価値の高い組み立てプロセスが日本に回帰する可能性は薄いです。英語中心でDX化した経営管理や、デザイン、AIを駆使した研究開発なども海外が主体になるでしょう。
仮に、そうした流れを反転することはできず、それどころか空洞化は加速するだけであり、日本発の3社の経営統合も、そうした流れの上での効率化に過ぎないのであれば、これは日本経済のニュースとして扱うべきではないと思います。また、そのような空洞化、具体的には国内雇用やGDPの軽視を放置するのであれば、経団連などの存在意義も改めて問われると思います。
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