コラム

アメリカで加速するAIの実用化、日本の進むべき道は?

2024年07月31日(水)18時20分

英語でも、ビジネス文書について「感じの良さ」「内容の正確さ」「利害が対立した際に突っ込まれない防衛的な表現」に気を配りながらレターを書くというのは面倒な作業です。それを、かなりの精度で下書きしてくれるAIは既に多くの社会人の心強い味方になっています。この勢いでAIが普及すれば、法律や会計などの文書作成業務などでどんどん人力がAIに置き換わると言われていますが、もうこのような動きは実際に始まっているのです。

仮にこの勢いで英語圏でAIの実用化が加速し、知的労働における生産性が向上するようですと、独立言語圏の日本は生産性において更に遅れを取る可能性があります。加えて、硬直した著作権への考え方を反映した規制など、日本ではAIの利点を活かすための知恵を加速するよりも、AIのデメリットを懸念する動きが目立ちます。


AIの成否を左右するのは何よりもデータの量です。日本語のデータ蓄積は英語圏と比較して1桁以上少なく推移するかもしれず、これに規制が乗っかるようですと、純日本語のAIというのは、英語版にどんどん置いていかれるのは間違いありません。そうであっても、英語版が加速度的に充実してゆくのであれば、日本語との翻訳ツールに資源を集中していって、英語のデータを活かすということは可能だと思います。

問題は、そうした日英、英日の自動翻訳についても既にシリコンバレー勢力がどんどん実用化を進めているということです。少なくともこの分野、つまり自国の言語である日本語と英語との翻訳ツールだけは、日本国内に精度が高く使い勝手の良いサービスを立ち上げて、これ以上の国富の流出を避けることを考えるべきと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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