コラム

日本の大学はChatGPTを「禁止」している場合ではない

2023年04月12日(水)15時00分

第2の点は、この Open AIにしても、その協業先やライバルなどの多くもそうですが、シリコンバレーを中心とした外国勢力だということです。この点に関しては、まさにこの4月上旬、当該の Open AI社のCEOであるサム・アルトマン氏が来日して、岸田首相と会談、さらに自民党本部のプロジェクトチームにも参加して、日本、つまり日本語におけるAIの実用化について協議しています。

冗談ではありません。日本語の言語データベースを作って言語データを蓄積し、その上で、日本語に最適化したアルゴリズムなどを開発し、現在英語で実現しているような対話型AIを開発することは、日本という文明、日本語という言語の将来を決定する重要な知的、文化的インフラに他なりません。

それを外資に依存し、外資による支配を受けるというのは、それも初期の段階から首相と与党がホイホイとそれに乗っていくというのは異常です。確かに、日本の現在の風土には、既得権益に脅威を与える技術や商慣習を国内の勢力が導入しようとすると、巨大な守旧勢力が抹殺にかかるという状況があり、あらゆる改革は「外圧頼みの遠回り」をしないと進まないという傾向があるのは事実です。

ですが、こんな初期段階から首相と与党が白旗というのは奇怪を通り越して悲喜劇としか言いようがありません。どうやら、本当にOpen AIは日本に拠点を設ける構えです。各大学は、日本の知性を代表する気概があるのなら、まず日本語の世界では自前のデータベースとアルゴリズムを持った自国のAIを開発すると宣言したらどうでしょうか。

そう考えると、AIに関するネガティブなメッセージばかりを発信している各大学の姿勢には、二重に失望させられるのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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