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バイデン来日の目的は本当に「対中包囲網」なのか?
支持率低下でバイデンは追い込まれている Elizabeth Frantz-REUTERS
<インフレによるアメリカの有権者の怒りは、現職大統領であるバイデンに向かっている>
5月22日にバイデン米大統領が来日します。日米首脳会談に続いて、東京で「QUAD(クアッド)」つまり、日本とアメリカ、インド、オーストラリアの4カ国の首脳会議が開催されます。「クアッド」では、安全保障などの分野での連携が語られるようです。
また、バイデン大統領は、今回の訪日に合わせて「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を表明するそうです。アメリカのレモンド商務長官が17日の記者会見で発表しています。
この2つはいずれも「中国包囲網」という性格を持っています。「クアッド」は軍事外交上の包囲網ですし、IPEFも通商上の包囲網という性格を持つことが予想されます。世界はロシア・ウクライナ戦争という危機を抱えていますが、少なくとも今回の「バイデン訪日」に関しては、相変わらず通商面でも安全保障面でも中国に対抗しようという姿勢に見えます。
ですが今、バイデンにはそんな余裕は全くありません。
バイデンの支持率は40%と低迷し、特に無党派層では35%と危険水域に入っています。アメリカでは、11月の中間選挙に向けて予備選が佳境を迎えていますが、有権者の間には現状不満のエネルギーが満ちています。
40年ぶりの物価上昇率
不満の原因はほかでもありません。インフレです。前年比での物価上昇率は、ここ数カ月、8.5%前後という40年ぶりの高い上昇率になっています。生活必需品であるガソリン、卵、ベビーミルクが、それぞれ別の理由も重なって暴騰する中で、中古自動車、不動産の高騰も顕著です。
有権者の間には怒りが渦巻いており、その怒りは現職大統領であるバイデンに向かっています。問題が物価高という具体的なテーマであるだけに、共和党は勢い付いています。バイデンは完全に守勢に回った格好です。
このタイミングで「中国包囲網」を強化するメリットは、バイデンにはありません。ここからは、1つの思考実験になるのですが、米中関係は大きな転換点を迎えつつあるという見方もできます。とりあえず、状況証拠としては以下のような指摘ができると思います。
1)原油価格を下げるには、ロシア・ウクライナ戦争の停戦が必要。現時点で仲介ができるのは中国。
2)アメリカの物価高の大きな原因は、中国との間の物流停滞。さらに上海ロックダウンによる生産遅延の影響も出始めている。
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