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公判開始前から難航しているジョージ・フロイド氏殺害裁判
ジョージ・フロイド氏の事件をきっかけにBLM運動は大きなうねりとなった Caitlin Ochs-REUTERS
<BLMの世論に押されて「殺人」での起訴となった事件だが、ミネソタ州の上級審が初級審に「傷害致死」の審理の追加を勧告>
2020年5月25日、ミネソタ州のミネアポリス市で46歳の黒人男性ジョージ・フロイド氏が、警察官により首を膝で7分間に渡って圧迫されて死亡する事件が発生しました。このニュースは一瞬にしてアメリカの社会を一変させました。理不尽としか言いようのないフロイド氏の殺害シーンの動画は、全米の世論を沸騰させ、他でもない「BLM(黒人の命は重要だ)運動」が再燃したのでした。
とりあえず事件直後に実行犯のデレク・ショービンという白人警官は解雇されました。最初は傷害致死に等しい「第3級殺人」容疑だったのですが、後に殺人罪である「第2級殺人(と同じく重罪である第2級傷害致死)」で起訴されています。その公判が3月8日から開始予定となっていました。
ところが、その3月8日の直前になって公判の先行きが怪しくなってきました。というのは、公判直前の3月5日の時点で、ミネソタ州の控訴審が今回の殺人罪を裁く初級審に対して勧告を行ったからです。それは、「第2級殺人」容疑に加えて、「第3級殺人」容疑も同時に審理した方がいいのでは、という勧告でした。
殺人の有罪認定はハードルが高い?
どういうことかというと、控訴審としては「デモ隊や世論に押されて重罪である第2級殺人での起訴にスイッチした」案件であるが、「第2級殺人の有罪認定はハードルが高い」ので、「万が一無罪になるといけない」から「第3級」の容疑も同時に進めるべきでは、という意味合いで「勧告」をしたと考えられます。
ちなみに、昨年にショービンが「第2級殺人」で起訴された際には、「第3級殺人」の有罪判例は全て「複数の人間に対する暴力の結果、その中の1名以上を死に至らしめた」場合に限るので、フロイド事件には当てはまらないと却下していたのだそうですが、その後、2017年に有罪となった判例があることが判明したのだそうです。
これに対しては、まずミネソタ州の初級審には、そのように起訴済みの容疑の中から「審理の対象を自由に組み合わせる権限はない」そうで、初級審としては困惑しているようです。また、8日の公判開始日が来たわけですが、「第2級殺人」だけなのか、「第3級殺人」を加えるのか決まっていないということでは、陪審員の選任もできないということになり、初日の法廷は進行しませんでした。
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