コラム

トランプ弾劾に向けて、いよいよ共和党の保守本流が動き出す?

2018年08月23日(木)12時00分

ただ、2つの有罪報道のショックは少なくても、全米の中間層に「トランプ離れ」を起こさせるという意味では、今回のニュースが「ジワジワと効いてくる」可能性を指摘する声は大きいようです。そこで言われ始めているのは、2つのシナリオです。

1つ目は、11月の中間選挙で、連邦下院の過半数を民主党が奪い返す可能性が、今回の「ダブル有罪」でさらに現実味を増したというものです。仮にそうなれば、民主党は大統領弾劾に進むでしょう。実際に、民主党の下院議員候補の中には「トランプ弾劾」を公約に掲げている例が増えています。

ですが、仮に民主党主導で「大統領弾劾」が行われるようでは、政局は空転することになり世相としては一気に不透明感が漂うことになります。市場は、そのような動きは嫌うはずです。それにも関わらず、「ダブル有罪」を受けた株式市場が平静であったということは、どういう意味なのか、今週あたりから囁かれているのは2つ目のシナリオです。

それは、中間選挙の結果に関わらず、中間選挙後には、共和党の本流なども「大統領弾劾」の動きに合流するという見方です。どうせ、この政権が持たないのであれば、この際「民主党が主導ではない」格好で、しかも時間をかけずに一気にトランプを弾劾し罷免に追い込んでしまおう、共和党の内部にもそうした動きがあるというのです。

その中には、今回の「ダブル有罪」を受けて社会も市場も動揺しなかったのは、ペンス副大統領が昇任するとして、「ペンス大統領」の登場が「信認された」意味として受け止めるべきだ、そんな声まで出て来ているのです。

今回の「ダブル有罪」を受けても、特にコーエン証言が大統領の違法行為加担を暴露した格好になっているのにも関わらず、「コーエンの指摘は虚偽」だと突っぱねるなど大統領は強気です。ですが、その背後では、静かに「トランプ降ろし」の動きが始まっているのかもしれません。2016年初頭の大統領予備選においては、「トランプ降ろし」に失敗した共和党の保守本流ですが、「メチャクチャな政治の弊害」が全米に、そして全世界に及ぶなか、今度という今度は本気だという見方もあります。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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