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アフリカ系ヒーロー映画『ブラックパンサー』が大ヒットした意味
『ブラックパンサー』で主役を演じたチャドウィック・ボーズマン(8日にロンドンで開催されたプレミア上映で) Peter Nicholls-REUTERS
<マーベル・コミック原作でアフリカ系ヒーローが主人公の『ブラックパンサー』が公開早々大ヒットを記録している。アメリカ社会におけるこの現象の意味とは......>
2月16日(金)に公開された、マーベル・コミック作品の映画化『ブラックパンサー』は、業界の予想をはるかに上回る大ヒットとなっています。封切りされた週末の興行収入が2億ドル(約214億円)を越えて「歴代5位」となっただけでなく、平日である20日の火曜日になっても1日あたりの興収は2000万ドル(22億円弱)と異例のペースが続いています。
本稿の時点では、封切り5日目までの累計が出ていますが2億3600万ドルを越えており、スター・ウォーズのエピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を上回るという驚異的なペースとなっています。私は、17日の土曜日に見に行きましたが、午後3時頃に小さなシネコンに行ったら深夜までソールドアウトと言われてしまい、隣町の大規模シネコンまで遠征する羽目になりました。
そのシネコンはスクリーンが24面ある大規模なものですが、ここでは30分間隔で上映がされており、各回の入場は整列させられるという、まさにスターウォーズ級の大ヒットという感じでした。
同じマーベルでも『スパイダーマン』『アイアンマン』など、あるいはその「ヒーロー総登場バージョン」である『アベンジャーズ』シリーズなどは、教科書通りの勧善懲悪劇の枠組みを守っていると言えます。一方で、この『ブラックパンサー』は、スーパーヒーロー映画でありながら統治者の孤独、生と死の境界、アフリカの大自然とそこの根ざした人々というようなスケールの大きなテーマを扱っているのが画期的でした。
どこか「クロサワ映画」のようでもあり、また日本でいえば『樅の木は残った』とか、越後上杉家の「御館の乱」のようでもあり、またシェイクスピア悲劇のようでもあり、要するに普遍的な物語をしっかり描いた作品とも言えるでしょう。
主題からはやや離れた部分ですが、韓国の釜山市があるシーンの舞台となっており、釜山市がロケに協力していてダイナミックなシーンが撮れていたのが印象的でした。また、同じシーンでは、トヨタの「レクサス」が重要なコンセプトの部分でタイアップをしていて、非常に珍しいことですが、「ウィン=ウィン」のイメージ作りの相乗効果を生んでいました。
ストーリーについては、お話しするのは差し控えますが、主役のティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマン(『42』でのジャッキー・ロビンソン役が有名)は思慮深く重厚なリーダー像の造形に成功していましたし、脇を支える女優陣(ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、レティーシャ・ライト)は華やか、また脇の白人キャラとしては、マーティン・フリーマンとアンディ・サーキスという「ホビット」のコンビ、そして複雑な役柄でマイケル・B・ジョーダンの演技も光っていました。
この『ブラックパンサー』の大ヒットですが、2つ大きな意味合いがあるように思います。
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