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アフリカ系ヒーロー映画『ブラックパンサー』が大ヒットした意味
1つは、60年代からの時間軸という問題です。この映画の原作は言うまでもなく、マーブル・コミックの有名な「アメコミ」ですが、このコミックが登場した60年代半ばには、もうひとつ「ブラックパンサー党」という政治結社がありました。カリフォルニア北部のオークランド市に本部を置き、人種差別の激しい時代にあって「武装して黒人のコミュニティを守る」という主義を貫いた団体です。
ですが、そのような闘争の姿勢は当時のアメリカの体制からは危険視されることとなり、党員の多くはFBIや警察によって殺害されています。公民権運動の歴史をたどる際には、今は「非暴力主義」を掲げたキング牧師を中心のストーリーが「公認の歴史」となっていますが、暗殺されたマルコムXからブラックパンサー党の歴史というのは、いわば秘められた歴史という位置付けになっていました。
アメコミの「ブラックパンサー」は、この「ブラックパンサー党」とは直接の関係はありませんが、同じ時代に生まれたこともあり、漠然とではありますが「秘められた存在」のようになっていました。マーベルのアメコミの世界の延長で、「ファンタスティック・フォー」や「アベンジャーズ」には、この「ブラックパンサー=ティ・チャラ」というキャラとしては登場していますが、このような大作映画になるというのは隔世の感があります。
もう1つは、現在、2018年という時代についてです。オバマ時代が終わり、トランプがホワイトハウスの主となっている中で、何となく、現在のアメリカというのは「忘れられた白人層が復讐をしている」時期のような感覚を持ってしまうことがあります。
ですが、そうではないのです。アフリカの王国を舞台にした純粋にアフリカ人の物語が、歴代5位の興行収入を叩き出したというのは、オバマの時代よりも、さらに時代は先へ進んでいる証拠です。より若い世代が社会に出てくる中で、多様性を重んじつつ人々が共存する社会へと、時代は前進しているのです。トランプ現象ばかり見ていると、見失いがちになる、そうした時代感覚を、この「ブラックパンサー」は強く喚起していると言っていいでしょう。
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