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分裂を煽るだけのトランプ「フェニックス居直り演説」
この演説会ですが、そもそもがアリゾナ州選出の2人の共和党上院議員への「あてこすり」が主目的でした。1人はジョン・マケイン議員で、この演説では名前こそ挙げていなかったのですが、「1人の反対でオバマケア廃止代替法が否決された」と激しく罵倒、もう1人のジェフ・フレイク議員については「移民に対して弱腰だ」と批判、特にフレイク議員は2018年に改選を迎えるので、ケリー・ワード氏という州議会議員をトランプ派の刺客として送る構えです。(但し、その場合は中間層の票が民主党に流れて議席を失うという可能性も指摘されています)
つまり大統領がわざわざアリゾナに行ったのは、現職の共和党上院議員の1人を罵倒し、1人を予備選で葬ろうという「議会共和党への宣戦布告」のようなものだったのです。こうした動きに合わせて、ニューヨーク・タイムズ紙は議会共和党のリーダーであるミッチ・マコネル議員が「大統領に対して激怒」という記事を掲載しており、政界には不穏な雰囲気が流れていました。フェニックスでの演説はまさにその「大統領」対「議会共和党」の対決を絵に画いたような構図になっていました。
【参考記事】白人至上主義の扱いめぐり共和党もじわり「トランプ離れ」
その他にも、予算を巡る債務上限議論が物別れになり、仮に政府閉鎖という事態になってもメキシコ国境には壁を作るとか、ヒスパニック系への人権侵害が問題になって有罪判決を受けている元保安官(7月に有罪、10月に量刑言い渡しの予定)について、前例のない大統領による恩赦を検討しているなどという、挑発的な発言が続いたのです。
いずれにしても、一番の問題は「シャーロットビル事件」関連の自身の発言について、都合の悪い部分は「なかったことに」する、つまり全く反省の色を見せなかったという点です。CNNのキャスター、ドン・レモンは「事実を隠す皆既日食発言」だという厳しい批判をしていましたが、大変な問題です。
これによって、中道からリベラルにかけての層では「トランプが大統領として留まるのは許容できない」というムードがより強くなった一方で、トランプ支持者の間では「悪いのは大統領批判をしているメディアであり、秩序を乱す左派のカウンターだ」という「敵味方の論理」が暴走しています。
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