コラム

トランプ長男のロシア問題は、なぜ深刻なのか?

2017年07月14日(金)16時00分

ロシア人弁護士との面会を明らかにした長男ドン・ジュニアは証人喚問されることに Stephanie Keith-REUTERS

<大統領選前にロシア人弁護士と面会していたトランプの長男ドン・ジュニア。ロシアの選挙介入を共謀していたことが立証されれば大変な事態に>

トランプ政権とその周囲がロシアと不適切な関係にあるという疑惑は、「ロシアゲート」と呼ばれ、現在はFBI並びに特別検察官による捜査が続いていました。その内容は、これまでは大きく分けて次の2つの疑惑が中心でした。

(1)トランプの選対本部長だったポール・マナフォート、安全保障補佐官だったマイケル・フリンの両名が、ロシア当局並びにその関係者の影響下にあり、金銭的にも不適切な関係があったという容疑。

(2)ロシア政府および諜報機関等が、自分たちに厳しく敵対しているヒラリー・クリントン候補が大統領に就任するのを妨害するために、2016年11月の大統領選に際してサイバー攻撃などの手段で選挙結果を歪めようとしたという疑惑。

この2つの問題は、基本的に別の問題です。ですが、仮にこの疑惑が一つのストーリーとして「一本につながる」ことになる、つまり「ロシアはトランプ政権の成立を望み、トランプ陣営は選挙戦勝利のためにロシアの諜報機関の工作を歓迎し、両者が何らかの連携をしていた」ということが立証できれば、大変なことになるわけです。

【参考記事】トランプ長男、ロシア疑惑の動かぬ証拠を自らツイート

そうなれば「大統領選が外国勢力によって歪められ、アメリカの民主主義が傷つけられた」ということになり、トランプ大統領は弾劾され、関係者の多くは有罪となって刑事罰を受けることになります。ただ、そこまでの立証は簡単ではない中で、例えばトランプ政権の内部で「発言の矛盾」が出てきたり、「事実の隠蔽工作」を行った形跡が明らかになったりすれば、それだけで大きなダメージになります。

今回「トランプ長男がロシアの弁護士に接触」というスキャンダルが一気に大きな問題になったのは、このロシア疑惑の様々なストーリーの中で、癒着疑惑の点でも隠蔽工作疑惑の点でも、様々な疑念を生じさせたからです。

このニュースですが、昨年夏にトランプが最終的に共和党の大統領候補への指名を確定した直後に、長男ドン・ジュニアがロブ・ゴールドストーンというフィクサーを通じてロシア人弁護士のナタリア・ベセルニツカヤ氏と面会したという問題です。

ベセルニツカヤ氏は2016年6月9日にトランプタワーを訪問し、ドン・ジュニアだけでなく大統領の娘婿ジャレット・クシュナー、そして当時は選対本部長だったポール・マナフォートの3人が、面会したとされています。

これについては次のような問題を指摘することができます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米との鉱物資源協定、週内署名は「絶対ない」=ウクラ

ワールド

ロシア、キーウ攻撃に北朝鮮製ミサイル使用の可能性=

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story