コラム

同性婚を認めない事務官が、一時収監された経緯

2015年09月15日(火)17時00分

 デービスさんは、男性カップルから告発され、連邦巡回裁判所が9月3日に収監を決定。彼女は拘置されました。これに対して、宗教保守派が連日、抗議行動を行い、デービスさんは8日に釈放されました。裁判所はデービスさんに、事務所としての結婚証明書の発行を妨害しないよう命令を出しています。

 この間、彼女の釈放運動には、共和党の大統領候補であるマイク・ハッカビー氏が奔走し、釈放の際には一緒に会見に臨んでいます。

 さてこのニュースですが、何点か説明が必要な点があると思います。今回は、Q&A形式で、疑問にお答えしようと思います。

(Q)最高裁の憲法判断を無視するのは、公務員の遵法義務にも反するでしょうし、これだけの混乱を招いたにも関わらず、デービス氏はどうしてクビにならないのでしょうか?

(A)州によって制度が異なるのですが、少なくともケンタッキーの場合は、こうした事務官は公選なのです。選挙の洗礼を受けているわけで、罷免手続きというのはあるのですが、この程度(?)のことではクビにできないのです。

(Q)それにしても、堂々と拘置所に入るというのは不思議です。回避できなかったのでしょうか?

(A)アメリカの場合、主義主張を通すために拘置所に入るというのは、別に過激なことではありません。例えば教員が違法なストを行って逮捕された際には、胸を張って収監され、それを保護者たちが(待遇が改善されれば良い教育が期待できるので)デモを行って支援するというのは「よくある」話です。拘置所に入ることが「恥」だとか「汚点」という意識がないのです。

(Q)共和党のハッカビー候補が応援に来たということは、彼女は共和党員なのですか?

(A)実はれっきとした民主党員で、2012年に事務官選挙に出る時も、民主党の「予備選」を勝ち抜いているのです。南部の場合、宗教保守派というのは、以前は民主党だったのですが、それが共和党支持にシフトしたという歴史があります。彼女の場合は、シフト前の「宗教保守派は民主党」という時代を引きずっていることに加えて、官公労など支持団体の関係で民主党支持なのだと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、対中関税軽減も TikTok売却承認な

ワールド

デンマーク首相、グリーンランド併合を断固拒否 米に

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ1679ドル安 トランプ関

ワールド

関税に対する市場の反応、想定されていた=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story