コラム

日本とアジアの間にそびえ立つ巨大すぎる慰安婦像

2017年08月25日(金)16時15分

<いわゆる「慰安婦」問題では、繰り返し謝罪する日本に繰り返し謝罪が要求され、まるで終わりが見えない>

「世界慰安婦記念日」の8月14日、韓国の市民団体は、新たにつくったカラー彩色の慰安婦像をソウル151号路線のバスに設置した。最初の慰安婦像がソウルの日本大使館前に置かれたのが11年12月14日。昨年12月に釜山の総領事館前に当時37体目となる慰安婦像が設置されると、日本政府は特命全権大使と釜山の領事を召還したが、その後も慰安婦像設置の動きが止まる気配はない。

第二次世界大戦中、日本軍は多くの従軍慰安婦を召集したが、その中には日本人も朝鮮人も、台湾人も中国人もいた。戦後になって韓国や中国、台湾は慰安婦の召集が強制で、非人道的な虐待やレイプを受けたと強調。この20年来、何度となく謝罪と賠償を要求してきた。

この問題に対する日本政府の謝罪の姿勢は一貫しているが、「国家の意志の下での慰安婦の強制連行」という表現は受け入れてこなかった。従軍慰安婦には給料が支払われており、韓国の言うような強制ではない、という立場だ。

15年12月、日本と韓国は慰安婦問題で最終合意に達し、日本は改めて謝罪。10億円を拠出して韓国が支援財団を創設するのを助けた。安倍晋三は首相として再び「謝罪」と「反省」を表明した。朴槿恵大統領も「この合意を基礎として信頼を重ね、緊密に議論し、双方の新たな関係が始まることを願う」と表明した。

【参考記事】王毅外相「日本は『心の病』を治せ!」――中国こそ歴史を直視せよ

しかし両国が合意に達してから1年後に釜山で新たな慰安婦像が設置されたため、日本は2人の外交官を召還し、以後ハイレベル協議を停止した。

第二次世界大戦が終わってから70年、繰り返し謝罪する日本に繰り返し謝罪が要求され、まるで終わりが見えない。この漫画で描いた巨大な慰安婦像は、まるで大きな山のように日本の前に立ちはだかっている。日本が近隣諸国との友好関係を確立しようとどんなに努力しても、日本がこの像を越えることはできない。

歴史は忘れるべきでない、ただしより重要なのは前を向くことだ。人生は続くのだから。 清算されなかったものは清算されるべきだが、合意は守られなければならない。過去の問題にこだわり、いつまでも繰り返すのなら、新たな関係を確立することなどできない。

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ルーマニア大統領選、親ロ極右候補躍進でT

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン
今、あなたにオススメ
>
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story