プレスリリース

世界初!グラフェン厚膜電極の製造に成功 大同メタルとマテリアルイノベーションつくば ~次世代エネルギー革命への第一歩~

2025年04月07日(月)15時00分
大同メタル工業株式会社と株式会社マテリアルイノベーションつくば(本社:茨城県つくば市、代表取締役:唐 捷)は共同研究開発の成果として、世界で初めてグラフェンを用いた画期的な厚膜電極の製造に成功し、従来の技術では実現が困難だったキャパシタの高エネルギー密度化を達成しました。


■背景と技術のブレイクスルー
近年、蓄電デバイスの進化が急速に進む中、高性能で持続可能なエネルギー貯蔵技術の開発が求められています。
二次元炭素ナノ材料であるグラフェンは、その比表面積の大きさ、高い電気伝導性、化学的安定性から、スーパーキャパシタ(注1)の電極材料として非常に有望視されてきました。
しかし、従来のグラフェン電極は、単層グラフェンの再スタック(積層)による特性の劣化が課題でした。そこで、株式会社マテリアルイノベーションつくばは、カーボンナノチューブをスペーサーとして活用する独自技術を開発し、新規複合材料「Gmit(R)」(図1)を誕生させました。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/432075/LL_img_432075_1.png
Gmit(R)複合材料の模式図

従来のグラフェン電極は集電箔にペースト状にしたグラフェン材料をコーティングしているため、厚膜電極(膜厚130μm以上)の生産は不可能でしたが、大同メタル工業株式会社は株式会社マテリアルイノベーションつくばが開発した「Gmit(R)」の技術を用いたグラフェン複合材を用い、キャパシタ用電極シートの製造で培った製造工程に自社開発の成膜技術を加え、高密度(0.7~1 g/cm3)で、厚膜(膜厚130~250μm)のグラフェン厚膜電極の製造に成功しました。
従来使われている活性炭キャパシタ電極と比較した場合、より高い電圧3.2Vに耐えることができ、重量当たりのエネルギー密度では、約3倍にもなりました。
また、大同メタル工業株式会社のグラフェン電極はグラフェン層単体のシート(自立膜(注2))として製造が可能なことから、集電箔に貼り付ける前に圧密工程を実施することで、膜厚、密度を緻密にコントロールすることが可能となり、多様な用途のキャパシタに用いることが可能です。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/432075/LL_img_432075_2.png
グラフェン自立膜の写真(膜厚150μm)

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/432075/LL_img_432075_3.png
コーティング型製法(従来製法)と大同メタル工業株式会社の製法概略図

■研究成果とそのインパクト
本研究において、厚膜(膜厚130~250μm)、高密度(0.7~1 g/cm3)のグラフェン電極シートの製造に成功。その結果、
・静電容量:194 F/g
・重量エネルギー密度:90 Wh/kg
・体積エネルギー密度:63 Wh/L
という業界最高水準の性能を実現しました。
さらに、試作したグラフェンスーパーキャパシタでは、セルの充填率が従来のコーティング型薄膜グラフェン電極と比較して約3倍に向上し、大幅な高エネルギー密度化が達成されました。
これにより、次世代の蓄電デバイス市場において、
・より高効率で安全なエネルギー貯蔵が可能
・長寿命化によりメンテナンスコストを削減
・環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献
といった大きなメリットが期待されます。


■今後の展開
このグラフェン厚膜電極は、従来の蓄電技術を大きく進化させ、エネルギー密度の飛躍的向上や、急速充電技術の革新にも貢献する可能性を秘めています。数時間の充電時間が数秒に短縮され、充電のストレスから解放されます。さらに、分散型電源との連結により、停電リスクの低減、スマートグリッド技術の発展、クリーンエネルギー社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。
まず、ロボット、ドローン、モビリティ、再生可能エネルギーといった幅広い分野への応用も視野に入れています。大同メタル工業株式会社と株式会社マテリアルイノベーションつくばは、今後もさらなる技術革新を追求し、グラフェンを活用した次世代エネルギー技術の開発を推進してまいります。

(注1) 従来のキャパシタと電池の中間に位置するエネルギー貯蔵装置である。主に静電吸着を利用してエネルギーを蓄積する。従来のキャパシタに比べ、エネルギー密度が高く、電池に比べると充電速度が速く、サイクル寿命も長いという特徴がある。主に短時間で大量のエネルギーを放出または吸収する用途に使用されており、例えば電動車両のブレーキエネルギー回収、バックアップ電源、高出力機器などが挙げられる。

(注2) 集電箔が無い状態で、活物質層単体で自立して存在しているシート。


[関連情報]
・大同メタル工業株式会社について
大同メタル工業株式会社は、1939年(昭和14年)の創業以来、自動車、船舶、建設機械、一般産業向けなど、多種多様な産業分野で使用される「軸受(ベアリング)」を製造・販売している「総合すべり軸受メーカー」で、日本、北米、欧州、アジア、中国の5つの地域において、生産・販売・研究開発体制を構築しています。
自動車のエンジンに使用される半割軸受では世界シェア約33.3%、大型船舶のエンジンに使用される軸受では同約73.0%と、いずれも世界トップのシェアを有しています。(シェアは2023年暦年ベース/大同メタル工業株式会社推定)

・株式会社マテリアルイノベーションつくばについて
株式会社マテリアルイノベーションつくばは、物質・材料研究機構(NIMS)において長年蓄積してきたナノ炭素材料であるグラフェンを複合化させる材料技術を基盤として2017年にNIMS発ベンチャーとして創業しました。NIMSにおいて取得した知的財産を保有し、グラフェン等の新機能性材料の試作・販売並びに量産技術の指導を中心としたビジネスを展開してまいりました。
最近では、材料応用の分野、特に蓄電デバイスに関わる技術開発に注力しており、国内の研究支援プログラムを活用して蓄電性能を飛躍的に向上させる新規技術を完成させています。このような活動を通じて、材料から応用製品に至る広範なビジネス領域を開拓しているところです。


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、米自動車販売予想を約100万台下方修

ビジネス

関税の米経済への影響「不透明」、足元堅調も=ボウマ

ワールド

米、豪州への原潜売却巡り慎重論 中国への抑止力に疑

ビジネス

米3月CPI、前月比が約5年ぶり下落 関税導入で改
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 10
    「宮殿は我慢ならない」王室ジョークにも余裕の笑み…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中