Picture Power

【写真特集】アフリカの遊牧民に迫る過激派の影

NOMADLAND

Photographs by PASCAL MAITRE

2023年06月13日(火)15時00分

マリのフラニ族の牛飼いが夕方、家畜を町へ連れ帰る。過激派を恐れ、この地域で遊牧を営むフラニ族のほとんどは都市部で夜を明かす

<遊牧民の伝統的な生活が成り立たずに困窮する若者たちは、過激派組織の勧誘に吸い寄せられていく>

アフリカのフラニ族は、主にサハラ砂漠南縁部のサヘル地域を構成する15カ国に住む。その人口約3500万人のうち3分の1は牧畜をなりわいとしており、世界最大規模の遊牧民共同体を形成している。

フラニ語を主に話し、多くがイスラム教を信仰するフラニの環境は近年、激変している。気候変動や人口増大による砂漠化の拡大、干ばつでサヘルの放牧地が縮小。かつては共存関係にあった農耕で暮らすドゴン族やバンバラ族など周辺民族と土地をめぐる軋轢が増え、民族間抗争の様相を呈している。

ppnomad-map01.jpg

加えてサヘルではイスラム過激派の勢力も台頭している。伝統的生活が成り立たず困窮し、アイデンティティーを失ったフラニの若者がアルカイダ系やイスラム国(IS)系の過激派組織の勧誘に吸い寄せられており、地域の不安定化に拍車をかける。

年に1度、ニジェールで行われる祭りでの美少年コンテストの伝統を守る一方、過激派と接近して武器を取ることをいとわずサヘルの中で疎外感を深める――。そんなフラニの人々を、フォトジャーナリストのパスカル・メートルが3年にわたり取材した。

ppnomad02.jpg

祭りの行事として開かれる美少年コンテスト。17歳の男性たちが着飾って踊り、女性たちが審査する


ppnomad03.jpg

武装解除キャンプに参加するフラニ族のイスラム過激派メンバーたち


ppnomad04.jpg

毎年9月にフラニ族の支族ウォダベ(ボロロ)とトゥアレグ族が数千人、近隣諸国からニジェールの「塩の癒やし」祭りに集まり、旧交を温める


ppnomad05.jpg

ブルキナファソを中心とした西アフリカに広く居住するモシ族が結成した武装自衛組織が、村をパトロールする。不安定な治安のなか警察の役割を代替するが、フラニ族との衝突も絶えない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席がマレーシア訪問、保護主義抵抗に団結呼びか

ビジネス

米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税

ワールド

再送-米政府、ウクライナ支援の見積もり大幅減額─関

ワールド

トランプ大統領「自身も出席」、日本と関税・軍事支援
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 8
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    「増税原理主義者を打破する機会」トランプ関税は日…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story