Picture Power

【写真特集】50年前の沖縄が発する問い

A SUBJECTIVE TAKE

Photographs by TOYOMITSU HIGA

2022年06月18日(土)16時00分

米軍ハンビー飛行場のフェンスが続く軍道1号線脇で、スイカを売る女性。米軍払い下げのパラシュートを利用した日よけテントが風に揺れる(北谷町)。第2次大戦末期、米軍がこの地から上陸して市民を巻き込む悲惨な地上戦が始まった。米軍は占領後すぐに土地を接収し基地を建設した

<写真に残された50年前の現場は問い掛ける、歴史の残滓から解放されない沖縄にいま何をすべきかと>

沖縄復帰前後、本土から報道カメラマンや写真家が押し寄せ、沖縄で撮られたおびただしい数の写真がメディアをにぎわせていた。当時、琉球大学の写真クラブで活動する学生だった比嘉豊光は、よそ者の視点で「撮られる」沖縄に違和感を覚え、地元生まれの自らが「撮る」主体として沖縄に向き合った。

路線バスや車の車窓から、切れ目なく続く米軍基地のフェンスやサトウキビの収穫など、生活の中でなじみの深い「当たり前の風景」をフィルムに焼き付けた。全沖縄軍労働者組合(全軍労)の闘争は、年齢の近い青年部の運動員たちと寝食を共にして、内側から揺れる社会とその矛盾を切り取った。

比嘉は撮った写真を自らの所有物とはせず、現場で撮られる側だった人々に見せ、出来事や背景について語り合い共有する。これを「写真を現場に返す」と比嘉は表現し、そうすることで写真に「マブイ」(沖縄の言葉で「魂」)を込めると言う。私たちは写真に導かれて比嘉らが暮らした半世紀前の現場へ戻る。すると、マブイからの問いが聞こえる。歴史の残滓からいまだに解放されない沖縄に、いま何をなすべきなのか、と。

――片岡英子(本誌フォトディレクター)


ppoki08.jpg

「首を切るなら基地を返せ」。1971年2月、大量解雇に反対してデモをする全沖縄軍労働者組合(全軍労)の牧港青年行動隊が、ゲート通りを埋め尽くした(コザ市〔現・沖縄市〕)。米軍基地に反対しながらも基地労働者の解雇に抗議するという矛盾の構図には、長きにわたる米軍支配下に置かれた沖縄が抱えるさまざまな問題が集約されている


ppoki02.jpg

奥間ビーチの米軍保養施設で余暇を楽しむ米兵(国頭村〔くにがみそん〕)。米兵は日常の中に存在する。この頃、朝食を取る米兵に、沖縄の子供たちが基地の金網越しに「ギブ・ミー・オレンジ」と声を掛けると果物などを投げ返してくれたという。クリスマスには兵士がサンタの格好で村の公民館にプレゼントを持ってきた


ppoki03.jpg

沖縄の基幹産業の1つであるサトウキビの収穫風景。家族総出で作業をする(沖縄本島北部)。沖縄の人々にとっては、畑も基地も「当たり前の風景」の1つにすぎない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用

ビジネス

米電力業界、次期政権にインフレ抑制法の税制優遇策存

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story