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【写真特集】シリア内戦、10年目の絶望と救い
FRAGMENTS OF A DECADE
Photographs by SYRIAN PHOTOGRAPHERS
シリア北西部イドリブ県マーラトミスリンの避難民キャンプでテントの外で眠る男性(2020年7月)©OMAR HAJ KADOUR/AFP
<シリアの現状を記録する写真家たちは、内戦の犠牲者であり、生存者でもある>
2021年3月15日、シリアは内戦勃発から10年を迎えた。多大な犠牲者を出し、何百万人もの市民が故郷を追われた。悲しいことに、これは現在進行形の話だ。
私たちシリア人の写真家は、国連人道問題調整事務所(OCHA)のシャーロット・キャンズの心ある提案によって、内戦の悲劇を記録する機会を得た。私たちは写真家だが、内戦の一部であり、犠牲者であり、生存者でもある。それぞれの地域でカメラに収められた作品の集合体を通じて、シリア国民の団結を見せたい。
手書きのキャプションと写真は、世界が忘れんとする紛争への入り口だ。
<冒頭写真のキャプション>
オマール・ハジ・カドゥール
この10年、星空を見上げることなんてなかった。だから昨年の夏、私は破壊された町の上に輝く星々を避難民キャンプから見上げて驚いた。この光景は、神によってつくられた世界と、人がつくり出す2つの世界があるという考えを思い出させた。そう、子供だった頃、ちゃんと屋根がある家の中で眠っていた頃に感じたことを。写真の男性は、神のつくった星々に照らされることで、暑さや人間の作った不便なテント暮らしから救われている。
ガイス・アルサイード
内戦が始まる前、私は世界的なサッカー選手になることを夢見る中学生だった。写真は、趣味程度のものだった。それでも周囲は私をこう呼んだものだ。「わが写真家の友人」と。17歳になった頃、シリア全土に反政府デモが広がった。運動が高まるにつれて、私は目の前で起きていることを記録する情熱に駆られた。そうして2015年、私はフォトジャーナリストになり、地元や国際的なメディアで仕事をしている。
空爆を取材するときはいつも、街を破壊したミサイル爆弾によって殺された兄弟のアマールを思い出す。ある時、空爆を受けたサルミンの町に取材へ出向いた。爆撃を受けた場所に広がっていたのは、日常的に繰り返されている、おなじみの光景だった。建物が瓦礫になり、人々は恐怖に涙する──アマールが殺された時の私と同じ気持ちだ。
悲嘆に暮れる人々にレンズを向けるときには、彼らがどんな反応を見せるだろうかと、いつも不安になる。でも私がこの写真を撮ったとき、彼らは驚くほど運命と宿命を受け止めていた。私に近づいてくると、家族を失ったことに泣き伏しながらも、何が起きたのかを真摯に語ってくれた。その時、私の脳裏にはアマールが殺された時の光景が思い出された。いつもは流すまいとしている涙を抑えることができなかった。子供や肉親を失った彼らの痛みに触れるのはつらい。でも彼らが見せた、生存者としてこれからを生きていく信念のような思いが私を強くした。同じ光景が繰り返され、いつ終わるとも知れないけれど。
ムザファ・サルマン
この写真は2013年、内戦下で壊滅的な打撃を受けたシリア北部の街、アレッポの現実を伝えようとロイターを通じて発表した。非現実的な写真だという批判もあった。こんな少年の姿をさらすよりも、彼にきれいな水を与えるべきだったという意見もあった。現実を拒絶するこうした声が出たのには、いくつかの理由があったと思う。政治的イデオロギーの違いからだったかもしれない。あるいは、自らの力のなさを痛感し絶望の思いから発せられた声だったのかもしれない。
だが現実に目を向けずして、どうして問題が解決できるだろうか。現実を変えることは現実を見ることから始まると信じている。そして、それは高い倫理観を携えた記録写真と、それらを撮る写真家が提供してくれる。現実を変えたいのか、画像だけ変えればいいのか。どちらが重要なのか、問うまでもないだろう。
キャロル・アルファラ
何が起きたの? 私の記憶はおぼろげだ...... この国に暮らしたことなどなかったと思うほどに、全ての美しい思い出を失った気持ちだ 死体の臭いが街中にあふれている 目を閉じれば、徒労感と、抑圧と、プライドが刻まれた人々の 顔が浮かぶ 私たちは、全てを失った...... 死者、負傷者、寡婦、孤児、強制と自発的な避難民、行方不明者......全てはただの数字にまとめられていく 私たちは、全てを失った...... この場所はもはや私たちの場所ではなく、たたえる表情も私たちの表情ではない 私たちが有していた物も記憶も、全て破壊された 母国で異邦人となり、母国は異邦人であふれている 私たちは、全てを失った...... 残されたのは、裸にされた魂、街中にあふれる墓、乾いた涙、廃墟となった街、平和に飢えた心──そして、写真に収められた記憶。それは愛する母国で起きた、人類の恥ずべき行為の証左として歴史に刻まれる
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