Picture Power

【写真特集】ベネズエラ難民の母子、苦難の旅を行く

VENEZUELAN MOTHERS RUSH TO MIGRATE

Photographs by CARLOS GARCIA RAWLINS

2019年07月25日(木)16時03分

末娘フランチェスカ(8)とペルー入国の手続きを待つスラメイ・ファリアス(47)。「子供とベネズエラで暮らしたかった。でもあの国の現状からは逃げ出すしかなかった」

<破綻状態に陥ったベネズエラから逃げ出す難民たち。最後まで国に残っていた「社会的弱者」たちの決死行を追った>

コロンビアを抜け、エクアドルを経てペルーへ──3カ国に渡る旅路を歩き続けるベネズエラの母親と子供たち。道中には胸まで水につかる川や偽の案内人、強盗が待ち構える。母は入国管理の列の途中で子供に母乳をやり、駐車場で体を休め、行く先も知らないバスに揺られる。

「みんな目が見えないみたいに、さまよっていた」と、エリカ・ケベド(28)は振り返る。多くの女性と同じく、彼女は案内人に代金を持ち逃げされた。

venezuela-map.jpg

ニコラス・マドゥロ政権下でベネズエラが破綻状態に陥ったとき、最初に国を出たのは国外に職を求めた男たちだった。だがその後、女性や子供、老人も後を追わざるを得ないほど経済は悪化。もはや父親からの仕送りだけでは生活は立ち行かない。

6月中旬、ペルー国境の町トゥンベスにはかつてない数の女性と子供が駆け込みで殺到した。ペルーが入国審査の厳格化を発表したためだ。

難民の増加は、野党指導者フアン・グアイドによる変革の希望がしぼんだことの裏返しでもある。アメリカによる制裁も、この国で最も貧しい人々を最も苦しめる結果となっている。

――ミトラ・タジ


PP1907302.jpg

アンドライミ・ラヤ(22)
トゥンベスの入国センターで娘ジェシー(2)を抱く。「グアイドには本当に期待していた。間違いなく国を変えてくれると思っていた」と、ラヤは言う。だが、ペルー政府がベネズエラ国民の入国を厳格化すると発表したとき、彼女は全てをなげうって娘とペルーに行くことを決意した。警察官になるという自身の夢も、家に残った最後の資産であるテレビも諦めた。「こんな所で死にはしない。きっとこれが最後のチャンスだってね」

PP1907303.jpg

テレサ・アマロ(83)
娘のマイテ・ペレス(43)、孫のエドワール・コステ(7)と共に、トゥンベスの入国センターにたどり着いた。心臓病を患うアマロだが、ベネズエラでは「薬は売っておらず、売っていても高過ぎて払えるお金はなかった」と語る。「電気も止まり、ガスもなかった。料理は薪でしていた。家を出る1カ月前からは近所のどこにもガスが通らなくなり、薪すらなくなった。ここに来たくはなかったけれど、この子たちが『1人で置いていけない』と言ってくれたの」

PP1907304.jpg

ロサルバ・バリオス(51)
娘のホセリン、孫のホレイリン(11)、ロジャーリン(8)と、ほかの子供たちが暮らすペルーの首都リマに向かう。裁縫を生業にしていた彼女の家族は国家の破綻で引き裂かれた。28歳の息子はベネズエラの首都カラカスで強盗に襲われ、83歳の母親は薬が手に入らず癌で亡くなった。「国を離れるのは簡単なことじゃない」と、バリオスは涙ながらに語った。「離れたくなかった。さよならを言うなんて。これまでの生活を捨てるなんて」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story