コラム

米大統領選の「超重大変化」で得する人は誰?(パックン)

2023年02月11日(土)16時47分

候補たちはこれだけ金力、気力、権力をアイオワに集中させているが、結局そのアイオワの民主党の党員集会に集まるのはたったの20万人ぐらい(州内の党員の3分の1以下)! 

出席率の低さは当然のこと。党員集会といっても1回投票して終わるものではなく、小学校の体育館とかで同じ選挙区の人と話し合い、繰り返し投票して代表を決めるまで続く「会」なのだ。結果、平日に仕事などを休んで、朝から晩まで知らない人と喧々諤々したい人だけが集まるわけ。

というわけで、アメリカ全体の約1%の人口しかないアイオワ州のさらに約6%の人しか参加しないのがこの党員集会だ。つまり全国の人口の0.06%に過ぎない参加者に、候補たちがあんなに媚びを売っているのだ。先ほどは失礼しました。やはり彼らもエリートだ!

もちろん皮肉だ。僕はこの政治的な歪みを是非是正してほしいと思っていた。

そこで朗報だ! ジョー・バイデン大統領の提案通り、民主党は最初の予備選挙をアイオワではなく、南部サウスカロライナ州で行うことにした!

その理由として、田舎に住む白人のアイオワ人は、都会中心、ダイバシティー中心の民主党の代表的な有権者じゃなくなっていることが挙げられている。

アイオワ重視からバイデン重視へ?

その事実は前回の党員集会の結果を見ればわかる。あれだけ本選の候補を選ぶ力(少なくとも本命の候補を占う力)を持っているとされ、注目されていたアイオワなのに、党員集会を制したのがピート・ブティジェッジ。2位はバーニー・サンダーズ。3位はエリザベス・ウォーレン。 

しかし、全国の予備選の結果、党公認の候補になり大統領に選ばれたのが、アイオワでトップ3に入りもしなかったジョー・バイデン! 明らかにアイオワ人と全国の民主党員の間に思いの齟齬が生じている。

アイオワが勝ち馬を選べなくなっている! だったら、アイオワに偏る制度をやめようではないか。そんな「正論」で半世紀ぶりに全国最初の座からアイオワは下ろされた。

では、なぜそのポジションはサウスカロライナに与えられたのか。マイノリティーの人数が多いこと、激戦州であること、そして何より、前回の予備選挙でジョー・バイデンが選ばれたことが主な要因だ。実は、それまで失速していたバイデンがサウスカロライナで勝ったことで風向きが変わり、公認候補になったと、本人も認めているのだ。

ということで、アイオワに偏った制度から......バイデンに偏った制度へ変わったのかな?

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story