コラム

アメリカで「でっち上げ陰謀論」が流行ったことの意味

2022年03月02日(水)14時10分

同じく昨年11月の別の調査で、「政府はコロナ死亡者数を水増ししている」や「妊婦はワクチン接種をしてはいけない」などの、コロナに関する誤情報に関して「真実だと思う」か「真実かもしれない」と答えた人は78%もいた。公衆衛生もピンチ!

コロナ関係の陰謀論は命が関わる問題だ。というのは、陰謀論を信じる人が多ければ多いほど対策が遅れたり、間違ったりするはず。アメリカのコロナ死亡者数はまもなく100万人を超える見込みだ。陰謀論拡大のせいで対策の実施率が低く、犠牲者の数が1割でも多くなっているとすれば、その数はベトナム戦争と朝鮮戦争を合わせた米軍の戦没者数を超える計算になる。

命を奪う温暖化対策の遅れ

パンデミック時、政府への信頼はとても重要だ。英医学誌ランセットに発表された研究によると、政府に対する信頼とコロナ感染率は明らかな反比例関係にある。もしアメリカ人が韓国人と同じほど政府を信用していたならば、感染者数は4400万人少なかったはずという試算もある。どうやらこの場合「信じる者は救われる!」のだ。

まあ、ランセットを信じるならばね。

地球温暖化関連の陰謀論も同じような悪影響が考えうる。温暖化の被害は、2050年までに23兆ドルの経済損失、毎年25万人の超過死亡などとされている。「自由の世界のリーダー」と名乗るアメリカの陰謀論者のせいで温暖化対策が遅れたとしたら、被害規模が大きい分だけ罪も重いはず。

つまり、陰謀論を信じているアメリカ人のせいで国も世界も損してしまいかねない。

では、誰が悪い?「広める本人」や「信じる本人」にもちろん責任がある。だが、もっと大きな要因もある。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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