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アメリカで「でっち上げ陰謀論」が流行ったことの意味
このBirds Aren't Real(鳥はウソだ)運動はもちろん陰謀論のパロディーなだけだが、それに気付かず真に受ける人もいるようだ。地元メディアも、デモ行進を取材して本物のムーブメントとして取り上げることもあるほどだ。参加者にとっては最高の「インサイドジョーク(内輪向けの冗談)」になるし、その騒動を外から見る僕らにとっても面白い。
だが、こうした現象が起き得る国や時代は怖い。何もこうしたばかばかしい陰謀論が真に受けられたことは初めてではない:
米政府は墜落した宇宙人を隠している!
ユダヤ教徒もしくは秘密結社が世界の政府や企業を牛耳っている!
月面着陸は嘘だ!
こういった、古くから伝えられている陰謀論は、出るたびに嘘扱いをされて然るべきなのに、いまだに「信じるかどうかはあなた次第」のスタンスで取り上げられてしまう。
その上......
バラク・オバマはイスラム教徒のケニア人だ!
米民主党の重鎮を中心に悪魔崇拝や児童の人身売買が行われている!
コロナ禍は製薬会社の仕込みだ!
ビル・ゲイツがワクチン接種を口実に人々の体内にチップを埋め込み監視している!
などなど、新しい陰謀論も次々と生まれている。コロナ関連だけでも10以上の有名な陰謀論がある。オミクロン株よりも、ガセネタの感染力のほうが強いようだ。
民主主義が危機に
そして何といってもアメリカは、「オバマはケニア人説」、「ヒラリー・クリントンは人殺し説」、「地球温暖化は中国のでっち上げ説」などを広めた、れっきとした陰謀論者が大統領になってしまった国でもある。その人物は就任してからも「大統領に抵抗する政府内政府(ディープステート)がある」とか、「本当にコロナで死んだのは公式の死亡者数の6%に過ぎない」、「バイデンは選挙の不正で大統領になった」などの陰謀説を広め続けたのだ。こうした「トランプ物語」こそが真実なのに、ばかばかしすぎて陰謀論に感じてしまうね。
確かに陰謀論は面白くもある。だが、実害を伴うことを忘れてはいけない。鳥や宇宙人関連のウソは無害かもしれないが、陰謀論者の妄想では世界を牛耳っているユダヤ教徒は実際の世界では本物の差別や迫害を、過去から現在にわたって受け続けているのだ。あと、少なくとも月面着陸を否定する男性1人は月面着陸を成し遂げたバズ・オルドリン宇宙飛行士に顔面パンチされている(本当の話)。小規模だがこれも実害だね。
最近唱えられている陰謀論の危険性も明らかだ。
昨年の世論調査によると「バイデン大統領の当選は正当だった」と認める共和党員は19%しかいない。彼らがバイデン政権の政策に協力するはずもなければ、今後の選挙結果を認めるはずもない。民主主義がピンチ!
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