コラム

群馬ファンの僕がメディアに言いたいこと(パックン)

2021年11月30日(火)17時00分

アンケートには魅力度の他に「認知度」や「イメージ」の項目もあるし、「地域ブランド調査」という調査の名前からも分かる通り、このランキングが測っているのは各地の知名度やブランド力だ。この2つなら実体験に加えて、メディアから伝わってくる情報に基づいて答えていいはず。人の印象を聞いているので、誰でも回答する資格はあるし、それを集計する意義もある。ブランディングはむしろ訪れたことのない人向けの活動なので、このブランド調査の結果が、知名度アップを狙う各自治体の広報室にとって参考になるだろう。

でも、ブランドと魅力は違う。例えば、魅力的な人はどんな人だろう?才能のある、面白くて優しい人かな?では、その人が自分の素敵さをよくアピールしていれば、より魅力的な人になる?いや、ならない。本人の才能、面白さ、優しさなどは変わらないからね。まあ、「自慢話が上手!」という新たな加点はあるかもしれないけど。

でも、県が地元の観光スポットや生産品、素敵な企業や文化を広告で流すと、翌年の「魅力度ランキング」は上がる。前回最下位だった栃木県もそういう作戦で41位にジャンプアップした。そう考えると、今回は山本一太知事が猛反発したことが大きく取り上げられたおかげで、群馬県の「魅力度ランキング」も来年は上がるはず。でも、それはおかしい。知名度は上がるかもしれないが、県の魅力自体は変わっていないのにランキングが変わるわけでしょう?まあ、「不満話が上手!」という新たな加点はあるかもしれないけど。

キャッチーな主張のワナ

やはり認知度と魅力度は分けて考えるべきだ。「ブランド」や「イメージ」ではなく「魅力度」としてこの調査結果を伝えると、これは立派な語弊になる。調査会社も自社ブランドを守るためにも、やり方を直した方がいいかもしれない。だがそれよりも、本当の意味を伝えずに、いかにも正しく「魅力」を測ったかのように「魅力度ランキング」を報じたメディア側の責任が大きいだろう。

残念ながら、多くのニュースで似たことが繰り返されている。ソースも主張の根拠も吟味せずに発信された情報が滝のように流されているのだ。特に、極端でキャッチーな主張が広まりやすいインターネットの時代だからなのか、メディアの報じ方を見るとこういった疑問がよく思い浮かぶ。

・本当にバズっている?
・何人の不満で「苦情が殺到している」となる?
・専門家の見解とネット情報を対等に扱うのはOK?
・世界三大○○とは、誰が決めたもの?
→例えば、世界三大料理はなぜトルコ、中華、フレンチなの?イタリアン料理は?和食は?イギリス料理は?(突っ込みは読者にお任せします)

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿

ワールド

米、LNG輸出巡る規則撤廃 前政権の「認可後7年以
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story