コラム

これでウィンウィン? 金正恩とトランプの損得勘定

2018年06月13日(水)11時15分

トランプが得して、オバマが損した? Jonathan Ernst-REUTERS

<米朝の合同声明文は漠然とした内容にとどまり評価が難しいが、トランプ・金正恩双方の現状を考えればどちらも「得した」ことになる>

世界が見守る中、シンガポールで歴史に新たなページが刻み込まれた! しかし、新しく書かれている文字がかなりぼやけていて、読み取るのが困難。米朝の合同声明文は、漠然とした内容にとどまっているし、大統領の記者会見を見ても、はぐらかしている感じがぬぐえない。ということで、どう評価すればいいのか、少し迷っているので、当事者2人に聞くことにしよう!

以下、パックンの勝手なQ&A妄想をお楽しみください。(ストレス解消のために、今回多少ふざけさせていただいていることはご了承ください)

***

   
Q: 金委員長、首脳会談、どう評価しましょうか?

KIM: 最高です!  半年前に「ならず国家」として完全に孤立していた我が国は今、世界からこんなにちやほやされている。「残酷な独裁者」として誰にも相手にしてもらえなかった私も、半年間で韓国の大統領と中国の国家主席と2回ずつ会い、手厚く待遇されている。しかも、米大統領と対等な立場で首脳対談を行い、マンツーマンで話をし、肩を並べて共同宣言の署名式もやってる。核保有国、核武装国のままなのに、「非核化を目指す」と言うだけで完全に一流国家として認められていることになる。まさにウィンウィンじゃないか!

Q: ウィンウィンは双方が得するってことですが......?

KIM: そうだよ。我が国も私自身も得しているではないか! ウィンウィン! 「ならず国家」から「スーパーパワーと対等な国」に、「リトルロケットマン」かられっきとした国家元首にと、国際社会においての評価も地位も今回の首脳会談で跳ね上がっている!

Q: そうですね。では、トランプ大統領にお聞きしたいのですが、北朝鮮や金正恩は2重に得しているとおっしゃっていますが、そちらはどうお考えでしょうか?

TRUMP: もちろん、こっちもウィンウィンだ。俺も得するし、オバマも損する!

Q: それをウィンウィンと言うんでしょうか?

TRUMP: 当然! 俺が歴史的な首脳会談を行い、非核化の約束を引き出した。オバマができなかったことをこの俺がやったぜ。

Q: でも、北朝鮮が求めていたことにすべて応えていますね。人権問題に触れなかったし、終戦へ進みながら金体制の保証を約束した。米朝首脳会談自体も、どれも北朝鮮が長年要求してきたものです。

TRUMP: もちろん! 相手のニーズに答えないと交渉は成立しないだろう?!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:米関税「見直し」求め閣僚協議へ、先陣切る日本

ビジネス

米エヌビディア、H20輸出制限を一部中国顧客に伝え

ビジネス

中国が通商交渉官を交代、元WTO大使起用 米中摩擦

ビジネス

日銀、5月20ー21日に債券市場参加者会合 中間評
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story