コラム

パックンが米朝首脳会談の合意内容を大胆予想!

2018年05月16日(水)13時00分

ノーベル平和賞候補と言われてまんざらでもないトランプ Leah Millis-REUTERS

<外交交渉では完璧を求めることが合意の邪魔をすると言われているが、米朝交渉でトランプは、むしろ中身のない合意で勝利宣言をしてしまいそうだ>

The perfect is the enemy of the good.(完璧は良いことの敵だ)

フランスの思想家ヴォルテールが広めたこの言い方は外交に関してよく使われる。国家間の交渉の末、良い条件で合意が結ばれても、完璧じゃないからと拒否される傾向を指す定番の表現でもある。

この間、トランプ米政権が発表したイラン核合意からの離脱にも見てとれる現象だ。合意の内容自体は比較的良いもの。イランの遠心分離機の数を減らし、濃縮ウランの保有量を制限し、査察レジームを強化した。いわゆるブレークアウト・タイム(イランが核を完成させるのに必要な推定時間)を3カ月から1年以上にまで伸ばした。

しかし、合意に有効期限が付いていたとか、ミサイル開発を禁止していなかったなどの欠点はあった。そこで同盟国や専門家、自国の国防長官の反対をも押し切り、ドナルド・トランプ大統領は有意義な合意を捨ててしまった。

良い合意に反対したのは、トランプが悪いやつだからではなく、「良い」より「完璧」を求めてのことだ。それがThe perfect is the enemy of the goodの実例になる(もちろん、トランプは悪いやつでもあるけど......。)

さて、大注目の米朝首脳会談で目指す合意はどうなるか。ここでも同じ現象は見られるのだろうか?

ここで僕からの大胆な予想だ――完璧にとらわれなければ短期間で合意に至る! それもCVID込みで! CVIDというのは日米韓中が目標として挙げている「Complete, Verifiable, Irreversible, De-nuclearization」つまり、北朝鮮の「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」。制裁緩和や経済支援、国交正常化、金体制の保証などを交換条件に、北朝鮮は核を全て廃棄する約束をすると、僕は見ている。完全だ! また、査察団も入れる。検証可能だ! 試験場を破壊し、設計や実験のデータを削除して遠心分離機を破棄する。不可逆的だ! 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、これぐらいの譲歩をする心の準備も勇気もあると思う。あの髪型をする勇気があれば、怖いものはないだろう。

こんな合意なら「良い」内容になる。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story