コラム

サイコロを振って北朝鮮問題を考える(前編)

2017年04月27日(木)18時30分

もちろん、これは極めて短絡的なリストだ。実際に先制攻撃を行うなら100倍も複雑で難しい条件になるはずだが、僕らは「ごっこ中」だからこれぐらいにしよう。それでは、それぞれの項目に確率をつけてサイコロを投げよう。例えば成功率が50%だったら、サイコロの目で1~3が出たら成功で、4~6が出たら成功と考えるのだ。でもせっかくだからここでは極端に楽観的な試算で、どれにおいても85%ぐらいの確率で成功すると設定しよう。

つまり、サイコロの目が1~5なら成功となり、6が出た場合は失敗だ。もちろん、項目1つ1つに合わせて毎回サイコロを投げることになる。上記のリストだと5回投げる。1回でも6が出たら失敗になる。

この計算だと、成功する可能性は十分なように感じるかもしれない。自分のカジノを破産させたとはいえ、トランプはギャンブルが好きそう。もしかしたら、賭けに出るかもしれない。

【参考記事】英「ロシアに核の先制使用も辞さず」── 欧州にもくすぶる核攻撃の火種

ただし判断する前に、先制攻撃が失敗した場合の結果も考えないといけない。

◆北朝鮮が在韓米軍、在日米軍への報復攻撃をする
◆北朝鮮が韓国や日本の民間人への報復攻撃をする
◆アメリカ VS 北朝鮮の戦争になる
◆アメリカ+韓国+日本 VS 北朝鮮の戦争になる
◆アメリカ+韓国+日本 VS 北朝鮮+中国の戦争になる
◆アメリカ側が戦争で"勝利"しても
     ――北朝鮮の核兵器が海外へ流出する
     ――北朝鮮で内紛が始まる
     ――北朝鮮から難民が大量に出て韓国や中国も不安定になる

これらも楽観的にサイコロを投げてみてもいいが、1つでも6が出た場合、大惨事になる。いろいろな試算はあるが、戦争になったら100万人単位で犠牲者が出る事態はほぼ避けられない。そんな危険な賭けになど出たくないだろう。

ただ、ここがポイント。先制攻撃をしなくてもサイコロを投げ続けないといけない。

というのは先制攻撃をしなかった場合でも、さまざまな選択肢と可能性が残っているからだ。代替案の成果も保証できないから、先制攻撃以外のやり方も結局、一種の賭けになる。

先送りしたときのシミュレーションは次回に取っておこう。サイコロを持ったまま、続けてお読みください。

<後編(28日アップ予定)に続く>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
毎日配信のHTMLメールとしてリニューアルしました。
リニューアル記念として、メルマガ限定のオリジナル記事を毎日平日アップ(~5/19)
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story