中国空母が太平洋に──トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化
大連港に停泊する中国初の空母「遼寧」(2012年) REUTERS
<空母「遼寧」の太平洋進出など、中国海軍が動きを活発化させている。それは就任間近なアメリカの次期大統領ドナルド・トランプが、これまでの大統領のように「人権」や「民主主義」といった理念を振りかざすのではなく、アメリカの実利のためには実力行使も辞さない手強い相手と見ているからだ」
2016年12月25日、中国海軍の訓練空母「遼寧」が宮古海峡を抜けて、西太平洋に入った。中国海軍のこの行動は、明らかにトランプ氏をけん制したものだ。中国は、自らの懸念が現実のものになるのを恐れているのである。
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空母「遼寧」は、3隻の駆逐艦及び3隻のフリゲート、1隻の補給艦を伴っていた。「遼寧」は、訓練空母であって実戦に用いる能力がないにもかかわらず、空母戦闘群の編成をとって行動したのだ。ファイティング・ポーズを見せているということである。その相手は、もちろん米海軍だ。
現在、米海軍では、一般的に空母打撃群という呼称が用いられているが、中国メディアでは空母戦闘群と呼称されることが多い。米海軍でも、2006年までは空母戦闘群という呼称を用いていた。呼称を変えたということは、作戦概念を変えたということである。米海軍の空母の運用構想は、すでに2000年代半ばには変わっていたということでもある。一方の中国は、未だ、空母戦闘群を米海軍との海上戦闘の主役と考えているようだ。
敵は太平洋から攻めてくる
中国海軍は、現在でも、台湾東方海域が米海軍との主戦場になると考えている。中国は、海軍の行動範囲の拡大は戦略的縦深性を確保するためだとする。中国が太平洋側に戦略的縦深性を確保したいと考えるのは、沿岸部に集中する主要都市を攻撃から守るためであるが、敵が太平洋から攻めてくると考えているということでもある。太平洋から中国を攻撃する国、それは米国以外にはない。米国が中国に対して軍事攻撃を行う可能性を懸念しているのだ。
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そして、中国の考え方によれば、米国が中国に対して軍事力を行使する目的は、中国の経済発展を妨害することである。中国は、国際関係は大国間のゲームであると考えているが、それは、中国が他の大国に搾取されるという強迫観念の表れでもある。そのため、中国は米国およびロシア(以前はソ連)に対抗できるよう、軍事力を増強してきた。
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