コラム

ビットコインバブルは2021年ほぼ間違いなく崩壊する

2021年04月19日(月)06時23分

第二に、ビットコインの価格がピークとなる明らかなイベントがあったからである。それは、暗号通貨取引プラットフォーム企業のコインベースの上場である。4月14日にコインベースはナスダックに上場された。コインベースの株価は暴騰するだろうと、暗号資産トレーダーの多くは期待した。参照価格は250ドルと言われ、それでもきわめて高い価格だが、実際についた初値はそれを大幅に上回る381ドルで、しかも、その後429ドルまで上昇した。これで投資家たちは大興奮となった。

しかし、早くもこのバブルは崩壊した。ピークは一日と持たなかったのであり、初日の終値は、初値を下回る328ドルとなった。しかも、上場前の非上場取引での価格348ドルを下回った。

IPO(新規株式公開)におけるバブルはどこの市場でもよく見られる現象であるが、このバブルが崩壊するきっかけは、初値を取引価格が下回ったときである。そして、コインベースの場合は、初日にこれが実現した。

コインベースバブルはすでに崩壊したのである。

コインベースとは、暗号資産バブルの究極の形である。これが崩壊すれば、元となる暗号資産バブルの崩壊は必然である。そして、暗号資産の中心にいるビットコインの暴落も必然となる。

社会的な背景、理論的背景も、バブルであること、そのバブルは崩壊することを裏付ける。

通貨として失格

まず第一に、ビットコインを含むこれらの資産が、仮想通貨と呼ばれていた時代から、暗号資産という呼び名に変わり、それが完全に定着したことだ。ビットコインが通貨かどうか、将来の通貨として定着するかどうか、技術的に以下に優れているか、という議論は過去のものとなり、現在は、これらは通貨ではなく、資産として扱われている。

第二に、これは理論的にも当然で、通貨とは、裏づけがあってもなくてもよいが、通貨は通貨として使われることで初めて通貨となるのである。ビットコインが一部の人がごくたまに遊び半分で取引に使うことはあるが、その取引総額は、ビットコインの時価総額をもちろんはるかに下回る。それどころか、何万分の1、何億分の1以下である。それは通貨ではありえない。

第三に、通貨にはなりえない証左は掃いて捨てるほどある。まず、価格が乱高下するのは通貨としてもっともふさわしくなく、暴落するものよくないが、急騰するのもよくない。安定して取引に使えないから、通貨としては最悪のものなのである。

もちろん、通貨は、国家が発行しなくてもかまわない。銀座の土地が、地上げ不動産投機グループ同士の間では通貨となりえる、土地資本主義が成り立つことも部分的にあるが、ビットコインはそれよりもさらに上場率は激しく、乱高下も激しく、そして、通貨として使われる割合が時価総額に比べて小さい。したがって、あらゆる資産の中で、もっとも通過としてふさわしくないだけでなく、実際にも、通貨として、もっとも利用されていない資産なのである。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者2719人と軍政トップ、「30

ビジネス

インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷主は「

ビジネス

独製造業PMI、3月改定48.3に上昇 約2年ぶり

ビジネス

インタビュー:半導体材料の業界再編「方針変わらず」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story