コラム

安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪

2020年08月28日(金)23時02分

日本の新型コロナの流行は、欧米諸国と比べ物にならないくらい小規模だった。なおかつ、経済的な行動制限も、ニューヨークやロンドン、北イタリアでは、完全な外出禁止であり、そうであれば、カネを市民に配ることは正当化されたが、日本では、自粛といいつつも、外出しようと思えば、いつでもどこにでも出かけられた。それでも感染が広がらなかったのは、そもそも感染の広がりが、欧米に比べれば、存在しなかったと言っていいくらいの小規模なものだったことにより、いずれにせよ、感染は広がらなかったのだ。死者が少なかったのは、外出の自粛ではなく、介護施設などでの自衛が欧米に比べて非常に上手くいった、個々の施設が努力し、優秀だったことに尽きる。

いずれにせよ、コロナ感染の被害は欧米に比べれば、はるかに小さかったのに、ばらまきは欧米並みだった。したがって、今後、感染が今まで広がらなかった分、第二波、第三波、そして、他の感染症の流行を含め、危機がやってくる可能性は欧米以上に高い。しかし、今回のコロナ対応で、バラマキを大盤振る舞いしてしまったために、次の危機ではばらまきたくでもカネがなく、感染を抑えられないか、または行動を制限できずに、危機が深まるリスクが高まってしまう。

これがアベノミクスの第二の罪だ。つまり、過度なバラマキを今回行ってしまったために、国民が甘えてしまい、自粛にはカネを政府に要求するという悪い政府へのたかり構造を作ってしまってことが、アベノミクスの第二の罪なのだ。

第一と第二の罪、金融緩和、財政バラマキによって、次の政権では財政破綻リスクが実現してしまう可能性を極めて高くしてしまったこと。それがアベノミクスの最大の罪である。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・午前=大幅反発、前日の急落から地合い

ビジネス

FRB議長解任、検討されていないこと強く望む=EC

ビジネス

米FRB、「政治的独立」で信頼構築=フィラデルフィ

ビジネス

IMF、金融安定リスク大幅拡大に警鐘 貿易巡る混乱
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story