コラム

サウジ原油施設攻撃で世界は変わる

2019年09月17日(火)12時30分

つまり、経済的なダメージを与えるだけで十分だ、ということになれば、あらゆるところにテロが可能になるのだ。これまでは、敵国の群衆に無差別テロを行うことであったが、それは、国際的な非難が最も大きいので、テロの持続性がむつかしくなり、また、米国だけへの攻撃であっても、米国とそれほど親密でなくても、国際的に正義となり、全世界的な連携で、テロ撲滅の動きが生じる。しかし、今後は特定国の経済的利益だけを損なえば、世界がアンチテロでまとまる力が弱くなるのだ。

すなわち、今回のドローンによる原油施設攻撃により、テロの持続性とコストパフォーマンスが大幅に高まったのであり、それが世界中のテロリストに明示されたのであり、今後、富める国、地域、グループは攻撃を簡単に受けるようになり、意外な、最も望ましくない形で広い意味での貧富の差の、覇権の差の拡大への攻撃がなされることになるのだ。

歴史は動いたのだ。

190924cover-thum.jpg※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国 悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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