小幡 績 転機の日本経済
官製ファンドはすべて解散せよ
事態の収拾を迫られる世耕弘成経産相 Kim Kyung-Hoon-REUTERS
<9月に発足したばかりの官民ファンド、産業革新投資機構と経済産業省が対立している。経産省側が機構の経営陣にいったん提示した高額報酬を、高過ぎると引っ込めたからだ>
産業革新投資機構(JIC)の問題が報道されているが、報道されている限りでは、明らかに政府、経済産業省の行動があり得ないもので、これでは機構側は対立せざるを得ない。
高額報酬が問題なら人材は集まらないし、今回の問題は、政府側が、あいまいなルールにしておいて、後で介入できる余地を残しておこうとした姿勢、考え方が根本的な問題なのだ。
投資はリターンを追及するものであり、政治的な配慮が少しでもあった瞬間に崩壊する。これまでのいわゆる官民ファンド(実態からいって、私は官製ファンドと呼ぶべきだと思っているが)がすべて失敗に終わっているのはそれが理由だ。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もあれだけのリスクをとるのであればもっとリターンが出るはずで、実際に企業年金基金にパフォーマンスは劣っている。
この問題点を解決するために、今回の投資機構は政府の介入を完全に排除し、すべてリターン優先で、という考え方を貫徹するために作ったものであり、それを根本から崩壊させる、政府が出資しているのだから口出しできないのはおかしい、という議論を声高に主張する政府の関係者(一部かもしれないが)は100%間違っている。
私は、そもそも、今回の革新投資機構にも当初から強く反対しており、その理由は、政府が(政治が)介入しないわけがない、と思っていたからで、これだけの人材を集め、これまでとは違うと強調されても、まったく信じていなかったから、やはり、というだけで、怒りも批判する気もない。
そもそも、官製ファンドなど日本では不可能なのだ。
政治のレベルが低すぎる
日本の政治のあり方からして、日本にはそんなことはできない。GPIFがリスクをとることに反対なのも、同じ理由だ。
投資業界や金融業界の所得や金銭感覚には強い嫌悪感があるが、それが現実であるなら、投資を本気でするなら仕方がない。
もっといえば、政治のレベルが極端に低すぎて、何もまともな改革はできないのだが、それがもっとも顕著に現れるのが投資の領域だ。
ひとつ意外だったのは、今回の動きは政治家サイドの愚かさから生じたものだと思っていたが、報道を聞いていると、どうも経済産業省の官僚サイドの幹部もそのような意見のようなニュアンスがあることだ。もしそうだとすると、日本の官僚(少なくとも経済産業省)の終わりを意味する。
いまだに自分たちが日本でもっとも優秀であり、民間でできることは自分たちが本気でやれば何でもできると勘違いしていること、日本を、世の中をコントロールできると勘違いしていることを示している。
これが事実なら、私のこれまでのかすかな政府に対する期待もはかなく消えることになる。
もし官僚ではなく、これまでどおり政治サイドの問題であったとしても、いずれにせよファンドはうまくいかない。
すべての官製ファンドはただちに解散せよ。
*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です
なぜ1人10万円で揉めているのか 2021.12.14
大暴落の足音 2021.12.02
いま必要な政策は何もしないこと 2021.11.11
経済政策は一切いらない 2021.11.10
矢野財務次官が日本を救った 2021.11.01
今、本当に必要な経済政策を提案する 2021.10.18
すべての経済政策が間違っている 2021.10.14